日本では、17時台から19時台が最も死亡事故が発生する時間帯です。しかし、夜間飛行は費用面での負担が重く、ドクターヘリが飛行できていない現状があります。本記事ではアエル・リーシング株式会社代表取締役の南康一氏が、ドクターヘリの抱える諸問題について、他国の実情を交えながら解説していきます。

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「日本のドクターヘリは費用不足」…海外の実態は?

【海外の費用の状況】

 

世界で最も早くドクターヘリを開始したスイスでは、スイス航空救助隊(Schweizerische Rettungsflugwacht=REGA)がドクターヘリとビジネスジェットを使って医療搬送を行っています。REGAによると運航の約25%は夜間飛行で、費用総額(2019年)は約200億円です。

 

この費用を運航基地数13基地で単純に割ると約15億円/基地になります。ざっとビジネスジェットにかかる費用を除いたとしても約9億円/基地、さらに原価(燃料、パーツ代、整備代など)と機体減価償却費だけに絞ったとしても5億円/基地といったところです。REGAでは、この費用を公的医療保険からの支払いと、パトロンと呼ばれる投資家からの会員費でまかなっています。

 

米国の場合、運航会社数が多く、その費用も差がありますが、米国航空医療事業協会(Association of Air Medical Services)によると、535基地を対象とした調査で平均約4億円/基地が費用掛かっています。この費用は、公的医療保険、民間医療保険、患者本人から回収されます。

 

余談ですが、以前業界関係者が集まるカンファレンスで海外の運航会社の方と話していた際に、日本の年間予算額を聞かれ答えたところ「ドローンでも飛ばしているのか?」といわれたことがあります。

 

当時はジョークだと流していましたが、同じようなエピソードを業界にいる知人からも聞きました。この費用額の差を踏まえると、真剣な質問だったのかもしれません。

 

費用額の差はもちろん夜間飛行だけが要因ではありませんが、夜間飛行体制への変更内容を鑑みれば、影響が大きいと考えるほうが合理的です。

 

 

仮に夜間飛行を行わないにしても、ヘリコプターやパーツの価格は海外の物価に合わせて上がるため、いずれにせよ、費用をどのようにまかなうかは常に考えなければいけません。

 

当然ですが、この手の課題は日本だけが抱えるものではありません。

 

たとえばREGAの場合、上記の200億円の営業費用に対して、実は売上は約195億円と赤字になっていました。人件費が増加したことが要因です。いまのところ繰越正味財産があるので問題ないですが、場合によってはパトロンからの会員費を上げるなどの対策が必要になるかもしれません。

 

米国の場合、自由競争のもとで運航が行われるため、昔から運航会社には経済合理性を追求したオペレーションが求められますが、スケールメリットを得られない小規模運航会社にとって楽ではないのが現実です。また、保険会社は営利法人です。保険金支払いを渋ることは珍しくないため、その対応にも労力を割かなければなりません。

 

これまで多くの運航会社の財務諸表をみてきましたが、ほとんどの運航会社が運航の持続可能性を担保するために奮闘・努力しています。

 

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