症状① ひざの内側が痛い
日本人の骨格はO脚の傾向が強く見られるため、ひざの内側に負担がかかりやすいと言えます。また、ひざの内側には筋肉が集まっている部位があり、そこが炎症を起こすことで内側に痛みを感じることもあります。
■原因として考えられる病気
・変形性膝関節症
ひざ関節の軟骨がすり減ることで、ひざに痛みが生じる進行性の疾患です。主な原因は加齢で、一般的には60~70歳代にかけて発症する方が増えてきますが、過去にひざの怪我などをしている場合は、若いうちから痛みを感じ始める方もいらっしゃいます。日本人の骨格はO脚の傾向が強く見られるため、内側型の変形性膝関節症を呈することで、ひざの内側に痛みを感じます。
<なりやすい人>
・60~70歳代の人
・過去に靭帯損傷や半月板損傷、骨折など、ひざのケガをしている人
・O脚の人
など
・半月板損傷
半月板は、運動や怪我などによってひざに強い衝撃がかかることで損傷します。ひざへの衝撃を吸収する半月板にヒビが入ってひざの周辺組織が炎症を起こし、痛みを感じるようになります。半月板はひざの内側と外側にそれぞれあり、内側の半月板を損傷するとひざの内側に痛みが出ることがあります。
<なりやすい人>
・バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプ動作を繰り返すスポーツをしている人
・サッカーなど、急な切り返しの動作が多いスポーツをしている人
など
・鵞足(がそく)炎
「鵞足」は脛骨というスネの骨の内側に位置し、ひざの曲げ伸ばしに関係する複数の筋肉がついている部位で、この部位で起こる炎症が鵞足炎です。運動前のストレッチを怠ることや過度なランニングなどによってひざに負担がかかることで発症します。
<なりやすい人>
・トラック競技などの走るスポーツをしている人
・運動前のストレッチを怠る人
など
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症状② ひざの外側が痛い
ひざの外側にある靭帯などが原因で痛みが出る場合があります。またX脚の方は、ひざの外側に負担がかかりやすく、痛みが出る場合があります。
■原因として考えられる病気
・腸脛靭帯炎(ランナー膝)
ひざへの負荷が繰り返されることによって、ひざの外側にある腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)が骨に擦れて痛みが出ます。スポーツ(マラソン、水泳、バスケット、バレーなど)や、長距離を歩いたり重量物を運搬する仕事など、ひざへ繰り返し負荷がかかるに動作が多い方に起こる可能性があります。
<なりやすい人>
・トラック競技などの走るスポーツをしている人
・重量物を運搬する仕事をしている人
など
・変形性膝関節症
X脚で外側型の変形性膝関節症を呈すると、ひざの外側に痛みを感じることがあります。しかし、日本人の場合は内側型の変形性膝関節症がほとんどで、外側型は少数と言われています。
<なりやすい人>
・60~70歳代の人
・過去に靭帯損傷や半月板損傷、骨折など、ひざのケガをしている人
・X脚の人
など
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症状③ ひざの裏が痛い
ひざ裏の痛みの原因のほとんどは骨や関節、靱帯が何らかの原因で損傷、または炎症を起こしたことによるものと考えられます。
■原因として考えられる病気
・半月板損傷
半月板の損傷箇所が後方(ひざ裏)の場合は、ひざの裏に痛みが出ます。
<なりやすい人>
・運動でひざに強い衝撃がかかることがある人(ジャンプの着地や急な切り返しの動きなど)
・ベーカー嚢腫
ひざの裏にある関節液(滑液)を含んだ滑液包が炎症を起こし、膨らむ疾患です。過剰な摩擦や圧迫が加わると炎症が起こり、圧迫感や痛み、腫れなどが生じます。悪性の腫瘤ではありません。
<なりやすい人>
・関節リウマチの持病がある人
・変形性関節症の持病がある人
・運動などでひざを酷使する人
など
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症状④ ひざの皿の下が痛い
ひざの皿の下の痛みは、スポーツでひざに負担がかかりすぎた場合に起こることがあります。
■原因として考えられる病気
・膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
ひざへの負荷が繰り返されることによって、ひざのお皿(膝蓋骨)とすねの骨(脛骨)の間にある膝蓋腱(しつがいけん)が炎症を起こし痛みが出ます。ジャンプなどのひざに負担がかかる動作によって発症することから、「ジャンパー膝」とも呼ばれています。
<なりやすい人>
・バレーボールやバスケットボール、走り高跳びなど、ジャンプ動作を繰り返すスポーツをしている人
・サッカーなど切り返し動作を繰り返すスポーツをしている人
・トラック競技など、走る動作が多いスポーツをしている人
など
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症状⑤ ひざを曲げ伸ばしすると痛い
ひざの曲げ伸ばしで痛みを感じる場合は、骨や関節以外に免疫や血液などの異常が原因のことがあります。
■原因として考えられる病気
・関節リウマチ
免疫の異常によって関節で炎症が起き、腫れや激しい痛みが生じる疾患です。症状が進行すると軟骨や骨が破壊され、関節が変形してしまいます。関節を曲げ伸ばしして動かすと、痛みが強くなります。
<なる可能性がある人>
・30~50歳代の女性に多く発症すると言われていますが、明確な原因はまだわかっていません
(家系内で遺伝する場合もあります)
・骨腫瘍
骨に生じる腫瘍で、ひざを動かすときに痛みが生じます。良性腫瘍と悪性腫瘍があり、大半の場合は良性です。悪性の場合は転移する恐れがあるため、早急な治療が必要になります。
<なる可能性がある人>
・家系内で遺伝する場合がありますが、明確な原因はまだわかっていません
・痛風
体内で尿酸が過剰になることで関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こす疾患です。プリン体が多く含まれるビールなどのアルコール飲料の摂り過ぎが、原因としてよく知られています。
<なりやすい人>
・アルコールをよく飲む人
・肥満の人
など
・変形性膝関節症
・半月板損傷
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ひざの痛みの治療法
主な治療は保存療法です。抗炎症薬や鎮痛薬を用いて痛みを取り除きます。
・変形性膝関節症/半月板損傷
薬物療法と合わせて関節腔内注射(ヒアルロン酸やステロイド)や、ひざにかかる負担を少なくするために大腿四頭筋などを鍛えるトレーニング(運動療法)を行います。
変形性膝関節症の治療については、こちらの記事で詳しく解説しています(関連記事:第17回連載『変形性膝関節症の治療法まとめ ~従来法から最新治療まで』)。
・鵞足炎/腸脛靭帯炎(ランナー膝)/膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
運動によるひざの使い過ぎが原因なので、まずはひざを安静にし、定期的にアイシングを行いながら、薬物療法や理学療法を行っていきます。
・ベーカー嚢腫
薬物療法とともに注射器でひざ裏に溜まった水(滑液)を吸引し、経過観察を行います。ベーカー嚢腫を予防するためにステロイドを患部に注射することもあります。
・関節リウマチ
免疫の異常が原因の疾患なので、抗炎症薬以外に副腎皮質ステロイド、抗リウマチ薬、生物学的製剤などで治療を行います。
・骨腫瘍
良性腫瘍の場合は、特に治療の必要はありません。悪性腫瘍の場合は、他のひざの痛み治療とは異なり、早急ながん治療が必要です。抗がん剤治療や、手術が可能な場合は腫瘍の切除を行います。
・痛風
鎮痛薬で痛みと炎症を抑えたら、尿値を下げる治療として、薬物療法や生活習慣の改善を行っていきます。
保存療法を行っても痛みが改善しない場合は、手術療法が視野に入ってきます。最近では手術以外に、ひざの再生医療も治療の選択肢として選ばれるようになってきました。再生医療は、患者さんの血液を採取し、自然治癒の作用を持つ血小板をひざに注射するPRP注射や、採取した脂肪から幹細胞を抽出・培養して注射する培養幹細胞治療などがあります。これらの治療はひざに注射するのみなので、手術よりも体への負担が少なく、日帰りでの治療が可能です。
ひざの状態や疾患によっては、再生医療が適応でない場合もあるので、ご興味がある方はぜひ一度クリニックへお問い合わせください。
ひざの再生医療についての詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています(関連記事:第5回連載『切らずに痛みを改善…ひざ痛治療の革命『再生医療』の最前線』)。
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痛みが続く場合は、まず病院で検査を
ここまでひざの痛みの症状別に、原因と考えられる病気について解説してきました。しかし、実際に診察してみないことには痛みの原因は特定できません。運動のし過ぎなどでひざが一次的に痛んでいる場合は、安静にすることで痛みが改善することもありますが、疾患によっては痛みを放置することで症状が進行・悪化してしまうこともあるので、注意が必要です。ひざの痛みが1カ月以上続く場合や、痛みがだんだん強くなってきている場合は、一度クリニックを受診し、ひざの検査・診断を受けていただくことをお勧めします。
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