コロナ禍の昨今、運動不足を解消しようと体を動かしてみたものの、ひざを痛めてしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、一口に「ひざ痛」と言っても原因は様々。運動をきっかけに痛み始めることは多いですが、そればかりとは限りません。誤った見立てで不適切な治療を行なっても、効果は期待できないでしょう。それどころか、さらなる悪化を招くこともありえます。
どんな痛みを感じたら、どの疾患を疑うべきか? 初期段階で適切な治療に繋げるためにぜひ知っておきたいひざ痛原因の基礎知識を、札幌ひざ関節症クリニックの向井原健太院長に解説いただきました。

スポーツが原因でなることが多いひざ痛

慣れない動き、ハードな運動をしたことがきっかけでひざの痛みを感じたら、次にあげる疾患かもしれません。

 

■膝蓋腱炎(しつがいけんえん)

●ひざのお皿のすぐ下が痛む。

●動き出しや、ジャンプ後の着地の時に特に痛む。

●時間とともに、階段の上り下りなど日常動作でも痛みを感じるようになる。

 

これらは、膝蓋腱炎で見られる典型的な症状です。

 

ひざのお皿の骨と、スネの骨の間にあるスジ(膝蓋腱)が炎症を起こしていることが原因で生じます。ジャンプやランニングなど、ひざに負担が繰り返しかかることがきっかけで発症することから、別名ジャンパー膝とも言います。通常は、炎症を抑える飲み薬や湿布、ストレッチなどで治療していきます。スポーツをしているなら、症状が治まるまでは練習をストップしてください。

 

■腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)

●歩いた時、走った時の着地の際に痛む。

●ひざの外側が痛む。

●安静にしていると痛みは治るが、動き始めると再発する。

 

このような痛みを感じたら、腸脛靭帯炎かもしれません。長距離ランナーによく見られるので「ランナー膝」とも呼ばれます。

 

原因は、大腿部からひざにかけての靭帯(腸脛靭帯)と骨(大腿骨外側上顆)が歩行や走行によって擦れることでしょうじる炎症です。治療法としては、まず局所を安静にし、患部を冷却して炎症を鎮め、並行して湿布などでケアします。痛みが和らいだら、ストレッチなどで損傷した靭帯をほぐしていきます。

 

■半月板損傷(はんげつばんそんしょう)

●ひざの曲げ伸ばしの際に痛みや引っ掛かりを感じる。

●急な切り返しを行なったり、ジャンプで着地した直後から痛みを感じる。

●急な痛みに襲われ、ひざの曲げ伸ばしができない。

 

このようなことが当てはまる場合は、半月板損傷が疑われます。スポーツや交通事故などを契機に発症することが多いですが、中年以降になると日常のちょっとした動きの中でも発症することがあります。半月板はひざ関節でクッションの役割を果たす軟骨組織ですが、半月板損傷とは、これが外部からの強い力によって断裂した状態です。

 

治療はサポーターやテーピングによる固定と、抗炎症剤や痛み止めの処方が一般的ですが、重症例には関節鏡手術を行い、損傷部位の修復や切除を行います。

 

■膝靭帯損傷(ひざじんたいそんしょう)

●接触プレー・非接触プレー問わず、サッカーやラグビーなどのひざの激しい切り返しを伴うスポーツを行なった。

●交通事故の直後から激しい痛みを感じる。

●急な切り返しを行なったり、ジャンプで着地した直後から痛みを感じる。

●膝関節が腫れている。

 

このような場合は、膝靭帯の損傷が疑われます。膝靭帯には内側側副(ないそくそくふく)靭帯、外側側副(がいそくそくふく)靭帯、前十字(ぜんじゅうじ)靭帯、後十字(こうじゅうじ)靭帯の4種類が存在し、損傷部位によって治療法は異なります。側副靭帯損傷であれば、安静とギプス固定で保存的に回復が見込めますが、十字靭帯の損傷に関しては、他の組織を代用して靭帯を再建する外科手術の適応となることがほとんどです。

 

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痛みの原因は自分?免疫障害によるひざ痛

痛みは必ずしも外傷がきっかけとは限りません。本来は自分を守ってくれるはずの免疫機能が原因になることも。その最たる例が関節リウマチです。その兆候と経過をご紹介します。

 

■関節リウマチ

●朝起きた直後、関節のこわばりでしばらく思うように動かせない。

●起きた後の着替えに手間取る。

●長距離乗り物で移動した後、関節のこわばりのせいで立ち上がるのに時間がかかる。

 

こうした兆候が見られたら、関節リウマチの可能性があります。痛み方の特徴は「関節のこわばり」です。そのほかには、関節の腫れや熱感、さらには全身の倦怠感も伴います。

 

30〜50代の発症が多く、若い方は手指など小さな関節に発症しますが、高齢になって発症する方の中には、ひじ、ひざ、股関節などの大きな関節に(早い段階で)症状がみられることもあります。

 

本来病原体を攻撃するはずの免疫が正常な細胞を攻撃してしまう「免疫異常」が原因です。関節内の滑膜が炎症を起こして増殖し、最終的には関節が固まってしまいます。

 

治療は、生活習慣の改善を土台として薬物療法で病気の進行を抑え、状況によっては関節を作り直す手術も検討します。

 

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中高年のひざ痛原因No.1 変形性膝関節症

中高年世代のひざ痛の原因で最も多いのは、変形性膝関節症です。特に思い当たる節がないのに痛み始めることもあれば、靭帯や半月板の損傷をきっかけに発症することもあります。加齢とともに衰えた膝関節が、慣れない運動をきっかけに損傷を受けて発症するということも少なくありません。

 

■痛みの特徴

●痛みだしたきっかけがはっきりしない。

●正座、しゃがむ動作、階段(特に下り)が辛い。

●動き始めに痛い。

 

変形性膝関節症には、このような痛みの特徴があります。長い年月で少しずつ蓄積された軟骨の摩耗が原因で発症し、その後も時間とともに徐々に進行していきます。

 

初期段階ではあまり強い症状が見られませんが、無理をせず早めに治療を開始することが大切です。これによって進行を予防することができます。

 

■ひざの状態はどうなっている?

膝関節を構成する太ももとスネの骨が接する部分は、骨同士が直接ぶつかり合わないように軟骨という組織で覆われています。

 

軟骨の表面は非常に滑らかで、普通の生活をしてる分には簡単にはすり減りません。しかし、何十年という年月の間にはさすがに磨耗していきます。また、歳をとると軟骨の滑らかさも失われるので、中年以降、軟骨がすり減るスピードにはさらに拍車がかかります。

 

変形性膝関節症患者さんのひざでは、このような軟骨の損傷が見られ、ひざをスムーズに動かすことが難しくなっているわけです。

 

 

 

■どうして痛くなる?

変形性膝関節症の痛みの原因は、関節内の炎症です。

 

炎症は、損傷して剥がれてしまった軟骨のかけらが関節全体を覆う膜(滑膜)を刺激することで生じます。

 

炎症が起こると、滑膜は多量の関節液を分泌します。これは関節軟骨を保護するために、より多くの栄養を届けようとする働きです。しかし厄介なことに、その関節液の中には炎症性のサイトカインという痛みの元となる化学物質が含まれていて、これが痛みを増幅させます。

 

 

 

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変形性膝関節症の痛みの改善方法

痛みの原因は関節の炎症と、その炎症を引き起こすひざへの過度なストレスです。治療では、これらの要因を一つずつ改善します。

 

■治療の基本は運動療法と炎症の緩和

痛みを緩和するためにまず必要なことは、ひざを支えて動きをコントロールしている太ももの筋肉を鍛えることと、ストレッチなどでその柔軟性を保つこと。そして体重のコントロールです。とにかくひざにかかるストレスを少しでも和らげることが重要です。

 

さらに、炎症を抑えるための治療を併用します。初期から中期にかけての薬物療法、ヒアルロン酸注射などがこれに当たるものです。

 

■再生医療は痛みに効果あり?

当院が行う再生医療はというと、これもまた、痛みの元となる炎症の抑制をターゲットにした治療ですが、他の治療法と大きく異なる画期的な点は、損傷を受けた組織の修復も期待できるということです。自然治癒に近い形で膝関節機能の回復をサポートします。既存治療で満足な効果が得られない方なら、試していただく価値ありでしょう。

 

当院では培養幹細胞治療という再生医療と、PRP-FDという再生医療に準じた治療を行なっていますが、後者は腸脛靭帯炎などのスポーツ外傷に伴うひざ痛にも有効です。

 

再生医療のメリット

1.持続的な効果が期待できる
再生医療は組織の修復と再生を促すものなので、一度の治療で持続的な効果が期待できます(目安は数ヵ月から数年)。

2.痛みの根本にアプローチできる
理論上は、痛みの直接的な原因(炎症)だけでなく、根本的な原因(組織の損傷)にもアプローチ可能です。つまり、ひざの機能回復までを視野に置くことができます。

3.体への負担が少ない
治療に使うのは自分自身の細胞なので、拒絶反応などのリスクは低いです。また、多くは手術を伴わない注射治療なので入院の必要はありません。

 

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原因に即した適切なひざ痛治療を

ここにあげた以外にも、ひざ痛は様々な原因で引き起こされます。ご自分の痛みの原因は何か、どの疾患によるものなのか、決して自己判断せず早めに医療機関にご相談ください。他の疾患同様、ひざ痛もまた、早期に適切な治療を行うことで予後はかなり良くなります。

 

受診の際には、痛みの契機、痛み方などについてどんな些細なことでも構わないので、できるだけ詳しく医師に伝えるようにしてください。

 

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