切らずに痛みを改善…ひざ痛治療の革命「再生医療」の最前線

ひざに少しでも痛みがあると、仕事をするのもつらく、休みの日に外出するのさえ億劫に。医療機関を受診しても、ヒアルロン酸注射や鎮痛剤の服用など、その場しのぎの治療しか受けられない。そんな悩みを抱えている現役世代に朗報です。変形性膝関節症の治療に「再生医療」をはじめとする先進的な治療が加わり、初期の痛みであっても継続的な効果を実感できる可能性が出てきたのです。東京ひざ関節症クリニック新宿院 横田直正院長に、ひざ痛の最新治療について解説いただきます。

一般的な治療では、ひざの痛みを抑えられない理由

◆「手術は60歳を超えてから」は、なぜなのか

40~50代で多くの人が経験するひざの痛み。その主な原因は、関節内の軟骨がすりへったことで起きる変形性膝関節症です。手術以外の方法としては、まず保険で行う投薬やヒアルロン酸注射といった標準療法が挙げられます。ただ、歩き出しに痛む、正座がしづらいなど、ちょっと不具合はあるけれど、何とか生活できるからと、痛みを我慢して生活を続ける……。すると軟骨のすり減りが増すだけでなく、半月板の変形や骨膜の炎症、さらにはひざに水が溜まって腫れるなど、症状は悪化の一途をたどってしまいます。


痛みに耐えかねて医療機関を受診したけれど、投薬やヒアルロン酸注射では痛みを緩和できない場合は、「手術という手はありますが……」と煮え切らない回答を医師からされることがあるかもしれません。

 

私も医師としてその気持ちはよくわかります。というのも、変形性膝関節症でもっとも一般的に行われる人工関節置換術は、80%程度の人に効果があり15年ほど持つと言われています。若い年齢で手術すると、そのタイミングで再手術が必要となる可能性が高いのです。

 

再手術する年齢は、当然ながら高齢になります。全身麻酔を使った大がかりな手術。しかも、ひざの手術は多量の出血の可能性があることや、血栓が起きやすいなど高齢者ではリスクが高まります。ですから、人工関節置換術は60歳を超えてから(できれば70歳を超えてから)すすめたい治療法なのです。

 

では、手術をするまでのあいだの痛みはどうするか。多くの患者さんは、ヒアルロン酸注射でしのいでいます。ただし、ヒアルロン酸は体内に吸収されてしまう成分ですから、1~2週間ごとに注射をしなければ痛みはぶり返してきます。

 

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「再生医療」はひざ痛治療を劇的に変える

◆画期的ではあるが、臨床実用までに時間のかかるiPS細胞

ここへ来て変形性膝関節症の治療に光が差し込んできました。それが「再生医療」をはじめとする先進的な治療です。

 

2014年に新たな法律が施行され、国も再生医療の実用化を推進する取り組みを実施し始めました。それに伴い、さまざまな医療分野で再生医療による治療が開発され、実際に臨床現場で利用され話題になっています。

 

再生医療と聞くと、iPS細胞を思い浮かべる人が多いかもしれません。iPS細胞は、人工的につくられた未分化な幹細胞で、そこから分化させてつくった細胞を移植する治療が研究されています。その他、病気の原因を解明する研究や、新薬の開発などへの応用も検討されているようです。しかし、多方面への実用には長い年月を要すると考えられます。

 

◆いらない脂肪細胞を利用する「間葉系幹細胞」による治療

一方、変形性膝関節症の治療では、体内にそもそも存在する「間葉系幹細胞」と呼ばれるものを利用します。中でも臨床で広がっているのが、脂肪由来の幹細胞を使った再生医療です。

 

臀部や腹部などから、不要な脂肪を採取し、加工したうえでひざへ注入します。採取できる脂肪量が多い場合には、その日のうちにひざへ注入することも可能ですし、少量の脂肪であっても6週間ほどかけて培養することで量を増やし注入することもできます。

 

脂肪由来の幹細胞には、脂肪のほか、骨、軟骨、血液、神経などの細胞に変化する能力があることがわかっており、その働きにも注目が高まっています。正直なところ、組織が再生するかどうかについては、新しい治療のためデータがまだ少なく明確な答えはありませんが、ひざ関節の痛みに対しては、炎症や痛みを抑える作用から軽減が期待できます。


実際、私たちのクリニックの治療実績では、国際基準でみて60%程度の患者さんが1~2年程度の期間、痛み軽減効果を得られています。また、幹細胞を培養してから注入する方が、成績が良いことを示唆する数値も見られます[※]。」

 

 

 

◆自己治癒力が発揮されるPRP治療

もう一つ、注目されているのが「PRP(多血小板血漿)治療」です。

 

私たちの体には、傷を負うと自ら組織を修復させる「自己治癒力」が備わっています。たとえば擦り傷ができると、血液が集まってきてかさぶたをつくり、次第に治癒に向かいます。このときに体内では、血液中の血小板に含まれるさまざまな物質が関与し、皮膚などの組織の再生を行っています。

 

ところが、関節の軟骨や靭帯などは、血管がほとんど通っておらず血流がありません。そこへ注射によって血液成分を入れるのがPRP治療です。患者さんから血液を採取し、遠心分離などによって、血小板を多く含む血漿だけを取り出し、ひざ関節に注射をするだけという、シンプルなものです。

 

 

◆成長因子が、PRP治療の効果をさらにアップ

さらに、ここ1~2年でPRP治療は進化し、当院でも扱っているのがPRP‐FD注射です。これらの先進的な治療は、ひざ関節が大きく変形してからでは、痛みの除去が難しい場合があります。しかし逆に言うと、痛みが小さなうちに実施することで「症状を悪化させない」期待が持てます。

 

現役世代でひざ痛に悩んでいる人は、なるべく早い段階で先進的な治療を検討するのが望ましいでしょう。

 

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東京ひざ関節症クリニック新宿院 院長

■東京ひざ関節症クリニック新宿院  https://www.knee-shinjuku.com/


東京大学病院の整形外科に入局後、複数の関連病院で医長を務めてきた。リウマチ専門医でもあり、関節外科手術や論文を数多く手掛けてきた整形外科専門医。学会や他院ドクターの勉強会に参加するなど、再生医療の研究と有用性を広める活動にも精力的に取り組む。


著者紹介

連載専門医が教える「ひざの痛み」を改善させる基礎知識&最新情報