最近ひざが痛む、なんとなくひざが重くて動かしづらいとお悩みの方、もしかしたらひざに水がたまっているのかもしれません。「ひざが痛いけど病院に行く時間がない……」「少し動かしづらいけど我慢できるし、そのうち慣れるだろう」と、ひざに水がたまった状態を放置してしまうと、取り返しのつかないことになってしまう可能性があります。今回はひざにたまる水の正体や水がたまる原因の病気、その治療法について、福岡ひざ関節症クリニック院長の石橋徹医師に解説していただきます。

「ひざに水がたまる」とは何か?

ひざにたまる水の正体は、増加した関節液です。関節液とは、関節を満たしている粘稠な(ねんちゅう:粘り気がある)液体のことで、関節を包んでいる袋(関節包)の内側を覆う滑膜という組織から分泌され、体重をうまく分散させ、関節を保護する役割を担っています。しかし、スポーツなどで無理な負荷をかけると、ひざの中の軟骨は損傷を受けます。また、40代以降では日常生活の動作でも小さな損傷が繰り返されるようになり、蓄積していきます。その結果、ひざ関節内に炎症が引き起こされ、滑膜からは、有効成分に乏しい関節液が大量に分泌されることがあります。通常、関節液は一定の量(1cc程度の少量)に保たれていますが、多いと50cc以上の水がたまってしまうこともあるのです。この状態を、整形外科では「関節水腫」と呼びます。

 

 

 

■水がたまるのはひざの異常サイン

ひざに水がたまった時の自覚症状としては、下記のようなものが挙げられます。

 

・痛みがある
・歩きにくい
・重くだるい感じがする
・ひざの曲げ伸ばしがしにくい
・腫れや熱を持っている

 

過剰に分泌された関節液は正常時とは異なり、ヒアルロン酸などの有効成分に乏しく、ひざへの衝撃を和らげる力がありません。それを放置したままにしておくと、損傷が蓄積し、傷ついた軟骨はすり減っていきます。関節液に炎症を引き起こす成分(炎症性のサイトカイン)が増加し、その作用でさらに炎症が慢性化、関節液が増え続けるという悪循環に陥ってしまいます(下図参照)。そのため、水の量を正常な状態に戻すとともに、根本的な原因への対処が必要です。上記のようなひざの異常を感じたら、自己判断で放置せずに、無理な運動は控えた上で、早めの段階で診察を受け、原因を特定する必要があります。

 

 

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ひざに水がたまる原因

先ほど少し触れたように、ひざに水がたまる原因は、関節内に引き起こされた炎症が影響しています。炎症の原因はさまざまです。また、抜いた水の色でもある程度の原因は特定できます。半月板損傷や靭帯損傷、骨折などの外傷によるものは、水が褐色や赤色(血液)です。関節リウマチや痛風などによるひざ関節の炎症は、白濁していることがあります。特に中高年の方に多い原因が、変形性膝関節症です。水は黄色く透明な色をしています。

 

■変形性膝関節症とは?

ひざ関節は、大腿骨と脛骨のつなぎ目です。この2つの骨の表面は軟骨に覆われており、ひざに加わる衝撃と摩擦を和らげてくれています。この軟骨がすり減ってしまうと、骨の表面は直接伝わった衝撃によって損傷を繰り返し、摩擦によって摩耗し、ひざに痛みが生じるようになります。放置すると、骨関節の変形が進行します。これが、変形性膝関節症です。50~60代での発症が多く、変形性膝関節症を抱えている人は、国内でおよそ2,530万人いると言われています*1

 

ここでみなさんにぜひ知っていただきたいことは、変形性膝関節症は、このように進行性の疾患であるため、早期に治療すると、この進行を阻止する、あるいは遅らせることができるということです。

 

最初は、ひざのちょっとした違和感や何かしたときに痛む程度ですが、軟骨の損傷が繰り返されると、すり減ると同時に、慢性の炎症が引き起こされ、水がたまるようになります。この頃から、痛みは強くなりはじめ、さらに進行するとひざが変形し、痛みで歩くことすらままならなくなります。そのため、ひざにたまる水は、ひざ関節が比較的早期に教えてくれる変形性膝関節症を進行させないで欲しい!という危険信号とも言えるのです。

 

 

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ひざに水がたまった場合の処置

ここではひざに水がたまったときの処置について、従来のものから最新のものまで、幅広くご紹介します。

 

■水を抜くとクセになる?

まずは、ひざの炎症によってたまった水を抜きます。色味から原因を探る検査の目的もありますが、水を抜くことで腫れが引き、痛みもある程度和らぎます。しかし、水を抜くだけでは根本的な問題解決にはなっていません。ひざの炎症が治まっていなければ、水は再びたまってしまうからです。よく「ひざの水を抜くとクセになってしまう」という話を耳にしますが、これは事実ではありません。炎症の原因をそのままにしてしまうことで、何度もひざに水がたまるわけで、抜くから「クセになっている」のではなく、「原因が残っているから何度も溜まる」という状態なのです。したがって、炎症を解決すれば水もたまらなくなります。

 

■薬物治療でひざの炎症を抑え、痛みを和らげる

水を抜くことに加えて、ひざの炎症を抑えるために薬物治療を行います。薬物治療の種類は大きく分けると「内服薬」「外用薬」「注射薬」の3つです。内服薬・外用薬(塗り薬や湿布薬)は、抗炎症や鎮痛効果のある薬の内服および患部への塗布によって、炎症と痛みを抑えます。注射薬は、鎮痛と炎症抑制効果のあるステロイド、軟骨を保護する作用があるヒアルロン酸の2種類があります。ステロイドはとても強い薬で、繰り返し使用すると副作用のリスクがあるため、常用はできません。ヒアルロン酸注射は、定期的な使用によって、変形性膝関節症の痛みを緩和してくれます。

 

運動療法も変形性膝関節症には効果的です。ただ、運動のしすぎや、ひざ関節の状態に適さないような運動は逆効果になることもあるので、自宅で行う場合は必ず医師の指示に従うようにしましょう。

 

(運動療法については、第11回連載変形性膝関節症のしてはいけない運動“1日1万歩”の落とし穴で詳しくご紹介しています)

 

■最終的には手術しかない現状

変形性膝関節症による関節炎で水がたまっている場合、初期段階であれば水抜きや薬物治療、ヒアルロン酸注射などで十分な効果が期待できます。しかし、これらはあくまでひざに水がたまる症状や痛み、歩きにくさなどを軽減させるための対症療法です。症状が進行してくると薬物治療だけでは効果が出にくくなってきます。ひざの強い痛みが持続し、O脚・X脚へと関節が変形してしまうと、ひざが伸びにくく、歩行障害も強くなり、日常生活に支障をきたすようになります。そうなると手術治療(人工膝関節置換術)が必要となり、勧められることになります。

 

しかし、人工関節置換術は大掛かりで体への負担が大きい手術です。血栓症や神経麻痺、感染症などの合併症のリスクを伴うこと、リハビリに時間がかかること、例えば軽く走る程度であっても、ひざに衝撃を与える動作ができなくなること、10~20年程度で人工関節の入れ替え(再手術)が必要になる場合があることなどのデメリットもあり、手術を躊躇される方が少なくありません。手術をしない場合は、定期的なヒアルロン酸注射を続ける方法がありますが、抜本的な改善は期待できません。変形性関節症は進行し、ひざの痛みに苦しむ生活を強いられ、徐々に日常生活が制限されてしまう方が多くいらっしゃいます。

 

■新しい治療法・再生医療の可能性

ひざの治療と言えば、薬物治療や手術などのいわゆる保険診療が一般的です。しかし、近年では自由診療のなかでも再生医療をはじめとする、先進的な治療法を選択肢のひとつにされる方が、少しずつ増えていることをご存じでしょうか?

 

こうした最新治療の登場によって、変形性膝関節症がある程度進行した方でも、人工関節のようなひざを手術する方法以外で、痛みの改善が期待できます。

 

例えば当院では、患者さんの血液を採取し、自然治癒の作用を持つ血小板を濃縮して注射するPRP-FD注射や、採取した脂肪から幹細胞を抽出・培養して注射する培養幹細胞治療を行っています。これらの治療は採血や脂肪の採取が必要になりますが、ひざへの治療はヒアルロン酸と同様、注射するのみなので、体への負担が少なく、日帰りでの治療が可能です。

 

これまでの治療法はひざの水抜きや薬物治療など、手術以外は痛みを緩和する対症療法のみで、ひざの症状の進行を止めることはできていませんでした。再生医療は、ひざの痛みを改善し、変形性膝関節症の進行を遅らせることが期待できる治療法です*2

 

自由診療のため、決して安い金額ではありませんが、大掛かりな手術なしでひざの痛みの改善が期待できるという点は、いままでになかった大きなメリットと言えると思います。

 

 

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まずは早めに医療機関へ

ひざ関節を支えるために重要な軟骨部分は、一度壊してしまうと完全に元の状態に戻すことは残念ながらできません。そのため、ひざの違和感や痛み、腫れなどの変化が見られた場合は自己判断せずに、早期の段階でまずはクリニックで診てもらいましょう。早い段階での治療が、将来、ひざの痛みで苦しまずにすむ生活を手に入れることにつながります。

 

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