ひざ再生医療の治療実態は?グラフで見る患者傾向や効果

ヒアルロン酸注射でも人工関節手術でもない、ひざ治療の新しい選択肢として近年知られるようになってきた再生医療。なかでも実用化が広がっているのが、ひざを切らない、入院不要の治療法です。当連載でもご紹介してきましたが、気になるのは「どんな人が受けているのか?」「どれくらい効果があるのか?」といったところでしょう。そこで、PRP療法や幹細胞治療を8,000例以上提供している整形外科グループから、医療法人社団活寿会(ひざ関節症クリニックグループ)の理事長 保田真吾先生に情報公開していただきました。

どんな人が受けている?ひざ再生医療の患者傾向

ニュース報道から、PRP療法や幹細胞治療などの先進治療は、スポーツ選手など限られた人が受けているイメージがあるかもしれません。しかし、すでに自由診療として整形外科クリニックで提供が広がっています。ひざ関節症クリニックにもアスリートの患者さまはいらっしゃいますが、ほとんどは変形性膝関節症にお悩みの一般の患者です。

 

前年度(2019年4月〜2020年3月)の当グループ治療実積を振り返ってみると、PRP-FD注射や培養幹細胞治療を受けられた患者さまがおよそ2,200人ほどいらっしゃったのですが、そのうち年齢や男女比、ひざの重症度は次のような割合になります。

 

■多いのは50代~70代。40代以下のニーズも高まる

当グループで治療を受けられた方の年齢層を詳しく見てみると、20代以前が0.8%、30代が2.0%、40代が8.0%、50代が20.8%、60代が29.5%、70代が28.4%、80代が9.8%、90代以降は0.7%となっています。

 

50代以上はそもそも変形性膝関節症の罹患が多い年代で、進行してることも多く、手術以外の治療法として再生医療を検討されるのだと推測されます。すでに手術をされていることも多い80代以降になると割合が減りますが、それでも年間で200人ほどは治療を受けられています。一方で、40代以下が1割を占める点も見逃せません。

 

 

■変形性膝関節症は女性に多い疾患

男女比は、男性35.6%、女性64.4%という内訳です。日本整形外科学会でも変形性膝関節症患者の男女比は1:4と示されていることを考えても、やはり女性が多い傾向にはうなづけます。

 

変形性膝関節症の危険因子として年齢や肥満などがありますが、女性ということもひとつの要因だからです。筋肉量が男性より少ないこと、更年期に骨や軟骨の健康にも関わっているエストロゲン(女性ホルモン)が減少することなどが影響していると考えられています。

 

 

■変形性膝関節症の進行期以降が8割

変形性膝関節症の痛みに再生医療を検討される方が多いのですが、なかでも当グループでは1~4まででグレード分けされる重症度の診断基準の3~4(進行期から末期)の患者さまが約8割を占めています。

 

再生医療の治療効果は?痛みや生活の質の改善度公開

実際に治療を受けている患者さまの傾向以外で気になるのは、やはり「どれくらい痛みが改善されたか?」という点ではないでしょうか。その点については、変形性膝関節症に対する治療法として、当グループが提供している「PRP-FD注射」「培養幹細胞治療」の症例データの分析結果を参考にしていただけるかと思います。2017年5月以降に治療を行った症例、かつ12か月の経過を終えている413症例(PRP-FD注射:306例/培養幹細胞治療:107例)を対象にした結果です。

 

■痛みや生活の質などが改善され、1年後まで効果が継続

PRP-FD注射とは、患者さまの血液中の「修復に働く物質」を濃縮して、ひざ関節内に注射する治療法です。一時的に自己治癒能力が高まることで、炎症や痛みを抑え、関節機能の改善が期待できます。一方、培養幹細胞治療は患者さまの脂肪に存在する幹細胞を採取し、培養してからひざ関節内に注射します。脂肪由来の幹細胞は抗炎症に働くだけでなく、痛みを抑える作用を持つ物質を分泌する性質があり、これらの働きによって、ひざの痛みの改善を図る治療です。

 

治療結果の分析では、患者さまの実感を数値化するKOOSという評価基準を用いました。下記は、5つの視点で治療前から12か月後までの数値を追ったグラフです。いずれの治療も、すべての項目において治療前からの改善が認められました。また、1ヵ月後〜12ヵ月後まですべての経過チェック時期で、治療前の状態にぶり返すことなく、改善が継続・維持されていました。

 

 

 

■変形性膝関節症の進行度によって、効果の出方が違う

改善効果は、変形性膝関節症の初期でも末期でも確認されました。ただ、細かく数値を分析すると、進行度によって改善の度合いが異なることも分かっています。下記のグラフは、PRP-FD注射、培養幹細胞治療それぞれのKOOSスコアの推移をまとめたものですが、グレードによって改善の仕方に違いが見られます

 

たとえばPRP-FD注射の場合、グレード1〜3は時間の経過とともにどんどん数値が高くなっています。つまり良くなっているのです。一方、グレード4では、治療前よりは改善するものの、1ヵ月以降効果は横ばい状態です。培養幹細胞も同様に、グレード2〜3は改善が継続しますが、グレード4では数値が停滞しています。

 

※培養幹細胞治療はグレード1(変形性膝関節症の疑いレベル)は適応外

 

 

 

つまり、どちらの治療においても、進行が早期の方が良い結果が得られると言えます。また、グレード3までとグレード4で、改善が得られた患者さまの割合を比較すると、PRP-FD注射は65.5%と50.5%、培養幹細胞治療は61.4%と54.1%と、前者により数値の開きが見られました。このことから、早期では特にPRP-FD注射で良い結果が得られると考えられます。

 

■実際の声からうかがえる再生医療の治療効果

患者さまから寄せられる声にも治療の効果が垣間見えます。もちろん治療前のひざの状態など、満足度に個人差はありますが、ひとつの参考にはしていただけるのではないでしょうか。

 

<PRP-FD注射後のアンケート>

「PRP-FDの注入後、日に日にひざの痛みがなくなり、3週間目くらいから杖もつかず、犬の散歩や駅の階段の昇り降りもスムーズにできるようになってきました。とにかく痛みがなくなり、こわばりもなくなり、さっと歩けるようになり嬉しく思ってます。」

「歩くこと、階段を使うことさえできなかったのに、今はゴルフやトレーニングまでできるようになった。人生が劇的に変わった。」

「最初は説明通りに痛みが推移していたので完治を期待しましたが、私のひざ関節の状態は思いのほか悪かったのだと思います。私のように重症になる前に受ければ、完治の可能性は高いと感じました。」

「足を引きづることもなく ほとんど痛みもなくなり 毎週治療に時間を費やす必要もなくとっても良い治療だと思いました。」

 

<培養幹細胞治療後のアンケート>

「以前から行っていたゴルフ・ダンス・ヨガなど痛くならずに現在に至っています。動作によっては痛くなることもありますが、歩行は大分楽になった気がします。」

「骨切術と違って、とても簡単、楽、早い。松葉杖も不要だし、仕事をしている人には影響が少なく済みます。」

「治療の価格が高いので即決は難しいと思いますが、痛みからの解放は、新しい人生に大切だなと思いました。孫に会いに北海道へ行きたいです。新しい人生が開けたようです。」

「私にはあまり効かないのかな?とか思ったときもありましたが、薄紙を剥ぐように確実に良くなり、杖も忘れ、痛みや不自由さから解放されてきました。生活の質も一段と良くなって、今は毎日が幸せな気持ちです。」

早期の治療検討が未来のリスク回避につながる

末期の患者さまでも治療前から比べると、痛みや生活の質など、様々な面で改善が確認でき、実際の声としても良くなったという感想は1例や2例ではありません。ただ、ご紹介した進行度別のデータを見る限りでは、変形性膝関節症の末期まで進行する前に、再生医療の選択肢を検討いただくのがベストだと考えます。

 

今後も、新しい情報は随時、何らかの形で皆さまにもお伝えしていきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

 

大阪ひざ関節症クリニック 院長

■大阪ひざ関節症クリニック https://www.knee-osaka.com/


医学博士を取得後、京都大学助教授として先進的な医学の研究にも従事。臨床では人工関節置換術も数多く執刀し、医長や副院長も務めてきた。
こうした経験から培った知識や技術を活かしつつ、困難な症例にも丁寧に向き合う。


著者紹介

連載専門医が教える「ひざの痛み」を改善させる基礎知識&最新情報