ひざの痛みにサプリは健康コストがかさむ!? 医師の見解を発表

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東京ひざ関節症クリニック
ひざの痛みにサプリは健康コストがかさむ!? 医師の見解を発表

「病院に行くほどではないかも」「忙しいからとりあえず」と、ひざの痛みの緩和にサプリメントを常用している方は少なくありません。ただ、ひざの痛みに限らず、効くのか効かないのか、議論が分かれるのがサプリメントです。今の痛みへの対処として、そして将来を考えたときにサプリメントに頼ることは、費用対効果でどうなのか。東京ひざ関節症クリニック銀座院の輿石院長に、サプリを服用する意義と、効果に関する見解を伺いました。

ひざサプリメントの効果は医学的な根拠がない?

グルコサミンやコンドロイチンなどが代表的なひざのサプリメントですが、実は効果についてコンセンサスを得るエビデンスは今のところ存在しません。国内外でも多数調査されていて、確かに「ひざの痛みが改善された」というデータを示す報告もあります。ただ、被験者の感覚を元にしたものが多く、画像検査などを参考に結論づけられた報告は、見かけたことがありません。日本整形外科学会でも、科学的な根拠が乏しいという見解が示されています。

 

■サプリメントの訴求は「軟骨成分の補充」

ひざの痛みに対するサプリメントの多くは、軟骨成分を補うことに着目して開発されています。そもそも、加齢が関係するひざの痛みの原因は「軟骨のすり減り」です。ひざ関節で向き合う2つの骨の表面を覆い、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしている軟骨ですが、加齢によってその成分は減少し、痛みやすくなっていきます。

 

軟骨は80%が水分でできていて、グルコサミンやコンドロイチンなどの集合体であるプロテオグリカンという成分が3〜5%含まれることで、水分をつなぎとめています。そして軟骨を構成するⅡ型コラーゲンを保護しているようなイメージです。

 

グルコサミンやコンドロイチンの他にも、サプリの成分にはコラーゲンやヒアルロン酸、プロテオグリカンの含有をアピールするものがありますが、加齢で減少してしまった軟骨成分を補うのが、サプリメントの訴求ポイントになっています。

 

 

 

■サプリメントの成分は本当にひざ関節に届いているのか?

ただ経口摂取では、サプリに含まれる成分は分解・吸収されてしまいます。有効成分が血中に取り入れられたとしても、血流がとても少ない軟骨に届くのかは疑問です。仮に届いたとしても、関節や軟骨はひざ以外にもあります。ひざ軟骨にピンポイントに作用することは考えにくいでしょう。

 

さらに言えば、現代の変形性膝関節症の治療には、再生医療の視点で痛み緩和や組織の修復を促す成分を、ひざ関節内に注射で直接投与する先進的な治療もあります。当院の症例でも、軟骨の修復を期待させるMRI画像が数件見られるものの、まだ調査を開始したばかりで、根拠として示せるほどの症例数とまではいきません。サプリメントの中には、軟骨の再生を思わせるような訴求をする製品もありますが、有効成分の直接投与でもまだ実証まで至っていないという点で、サプリメントの軟骨再生の効果は現実的ではないと考えます。

 

(ひざの再生医療や軟骨のMRI画像について詳しくは、第10回連載「ただの理想じゃない!ひざの再生医療に続々登場の新治療」をご覧ください)。

 

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サプリ体験談はプラセボ説が有力

効果が期待できないなら、費用対効果以前の話では? と思われるかもしれません。ただ、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントを飲んで「痛みが軽くなった」「歩くのが楽になった」との声も耳にします。それにはプラセボ効果が関係していると考えられます。

 

■サプリメントと偽薬、効果に有意な差が見られないという報告あり

プラセボとは、見た目には薬と同じだけれど、成分はでんぷんや糖分でつくられた偽の薬のことを言います。たとえ偽薬であっても、効果のある薬を服用していると信じることで心理的作用が働き、実際に効果が実感できることがあるのです。それをプラセボ効果というのですが、変形性膝関節症の患者に対するグルコサミンサプリメントの研究調査でも、認められたという報告があります。なかでも注目されたのが、2017年にイギリス医師会雑誌に掲載された論文*1で、調査データの中には偽薬の方の効果が高かったことを示すものもありました。3年前の情報ですが、以降もこの内容を覆すような報告は見かけていません。

 

■偽薬と知っていても信じていれば痛みは改善する!?

プラセボ効果はこれまで、偽り、つまりだますということが前提でした。ただ、腰痛に対して行われた2016年の調査報告では、正直に偽薬であることを伝えても、痛みの改善を実感できたことが示されています*2。仮説としては、真実を知っても期待感が勝って心理的作用が働いたという説がひとつあります。もうひとつは、飲み込むといった体感が関係しているという説です。こうした結果は、ひざの痛みに対しても起こり得るものと考えられます。

 

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サプリメントを飲むだけでは費用対効果が悪い?

結論としては、医学的には根拠が明確ではないサプリメントであっても、まったく効果がないとは一概に言い切れないということです。ただ、効果を得るにはプラセボ効果を発動する「信じ込む能力」が重要となり、かなり個人差が生じるでしょう。また、痛みが良くなったと感じても、関節内の状態が良くなるわけではありません。もっと言えば、はやくから飲んでいれば、変形性膝関節症の発症を予防できるというものでもありません。

 

サプリメントの値段は様々ですが、1ヵ月3,000〜5,000円ほどの価格帯を多く見受けます。継続して飲み続けることを考えると、年間36,000〜60,000円。40代から飲み続けるとすると、100歳時代の現代においては、150万円以上になることが容易に予想されます。さらに、変形性膝関節症の厄介なのは、痛みが緩和されたとしてもサプリメントを飲むだけでは進行を防ぐことはできないというところです。費用対効果については、こうした情報を踏まえたうえで検討する必要があります。

 

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変形性膝関節症の治療は、痛みの緩和と運動が肝

変形性膝関節症の場合、痛みがなくなる=完治ではありません。一度発症すると元の健康なひざ関節の状態に戻すのは難しいため、進行を予防することが重要になります。カギとなるのが、減量や筋力の維持など、ひざへの負担を軽減できる生活や体づくりです。だからこそ、食生活や生活スタイルを見直すと同時に、確実に痛みを改善し、運動を続けられるひざ関節にすることが大切なのです。

 

 

 

サプリメントも気持ちをサポートする補助剤として、痛み緩和に一役買うことはあるかもしれません。ただし、確実に痛みを改善するかどうかの医学的な証明がないため、医師としてはやはり、痛みを感じはじめたら早めに整形外科を受診し、ご相談されることをおすすめします。

 

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*1 Runhaar J. Subgroup analyses of the effectiveness of oral glucosamine for knee and hip osteoarthritis: a systematic review and individual patient data meta-analysis from the OA trial bank. Ann Rheum Dis. 2017 Nov;76(11):1862-1869.
*2 Cláudia Carvalho. Open-label placebo treatment in chronic low back pain: a randomized controlled trial. Pain. 2016 Dec; 157(12): 2766–2772.