『Amazon Prime Video(アマゾンプライム・ビデオ)』『Netflix(ネットフリックス)』をはじめとしたサブスクリプション(=サブスク)を活用している人は多いことだろう。有料動画配信サービスに倣い、大手企業がこぞってサブスクを始めているが、解約率の高さに頭を抱えるケースも少なくない。そんなときに活躍するのが、チャットボットを解約ページに置き、その原因をヒアリングするシステムだ。本記事では、株式会社Macbee Planetエヴァンジェリスト・佐野敏哉氏の書籍『解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋』(幻冬舎MC)より一部を抜粋、チャットボットを導入したバンダイチャンネルを例に解説していく。

解約防止チャットボットを分析して分かった意外な事実

◆膨大な会話を分析して解約との関連性を見つけ出す

 

バンダイチャンネルの解約ページでは、日々数多くの会話があり、その内容だけでなく一人ひとりの会話時間などのデータも記録しています。そのビッグデータをAIの解析ツールで集計して、解約との関係などについてのレポートが自動的にできるようにしています。データを取り始めてからまだそれほど時間が経っていないので、興味深い傾向が見えてくるのはこれからになりますが、次の一手を見つけるためになんらかの相関関係や因果関係を見つけ出すことが大事です。

 

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例えば解約率と視聴件数、あるいは解約率とどれぐらいの間隔で見ているかの関係については、はっきりした傾向が出ていません。「解約するかどうか悩んでいる」人はどれぐらいの頻度で見ていたか、1カ月以上見ていなかったのか、もっとずっと見ていなかったのかといったことについても相関関係がはっきりしていません。

 

比較的はっきりしているのは入会期間との関係で、1カ月未満の入ったばかりで解約する場合は防止しにくいという傾向が出ています。またコンテンツを見る時間帯は夜が多く、通勤時間や昼休みの時間帯にも見られていますが、その視聴パターンと解約とは因果関係がありそうだというところが見えてきています。

 

このほか今分析しているのは、チャットボットの質問に答える秒数との関係です。返事をするまでの時間が長い人はちゃんと考えてくれているか解約するかどうか迷っていて、さっさと返事をする人はもうやめようと心を決めているという仮説が前提です。まだ答えは出ていませんが、一つひとつの質問ごとに解析していくと、もっと意外な結果が出るかもしれません。

 

またチャットボットの利用時間帯、つまり解約しようと思ったのが何時なのかによっても、解約防止の可能性が違うのではと予想しています。これまでのところでは、利用時間帯は夜が多く、夜の場合は長く会話を続けて答えてくれる人が多く、朝の場合は短い時間で会話が終わるという傾向が出ています。

 

数々の仮説を立てることで、男性はこういう会話をするとやめづらいとか、直近に見ていた作品と解約の因果関係など、いろいろな傾向を探ることが可能になります。なにかの傾向が出てきたら、こういう会話をする男性にはこう対応するとか、この作品を見ていた人にはこんなシナリオに導いてはどうかといった対策を検討することができます。その傾向や対策を企業にフィードバックすることで、さらにチャットボットの利用価値が高まります。

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