皮下脂肪は食事制限でしか減らせない?医師が体を張って調査

巷では多くの健康法が噂されていますが、それらは本当に正しいのでしょうか? 本記事は『110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎MC)から一部を引用し、内科医である永野正史氏の自ら体をはった検証と、医学的な根拠を解説します。

皮下脂肪は「食事制限だけ」していれば落ちるのか?

今でこそスリムな体型の筆者ですが、実は10年ほど前までは完全なメタボでした。体重は今より20㎏以上も重い85㎏で、診察着はLLサイズ、それもパッツパツ。お腹が邪魔で下が見えないほどの超肥満だったのです。

 

そんな筆者に転機が訪れたのは2009年7月、50歳のときでした。「来年の3月に市民公開セミナーを開くので永野先生にも話をしてほしい」と、某大学の先生から連絡をいただいたのです。最初は辞退しましたが、筆者の専門である腎臓病のガイドラインに載っている生活指導についてだから大丈夫と、押し切られる形で引き受けたのです。

 

しかし、この体で生活指導というのも説得力がありません。ガイドラインを開くと案の定、ダイエットのことが書かれていました。

 

このままでは医師生命が終わると途方に暮れていたところ、クリニックの納涼会で看護師が得意気にジョギングをしていると話すのを聞きました。筆者もダイエットをしなければならないので、痩せて走れるようになったら、みんなでホノルルマラソンに参加しようと、その場の勢いで盛り上がり、自分を追い込む形で目標ができたのです。

 

そこで筆者は、半年間で10㎏、20㎏落とせる究極のダイエット方法を真剣に考えました。まず取り組んだのは、単純に食べる量を極端に減らすことです。朝食は抜き、昼食はおにぎり1個、夕食はキャベツの千切りなど山盛りの野菜と肉や魚を一切れ。これを8月から翌年の2月までの半年間続けました。その結果、20㎏の減量に成功したのです。無事に市民公開セミナーにも間に合い、醜態をさらすことは避けられました。

 

左:2009年5月(50歳、85kg)、右:2019年10月(61歳、65kg)
[写真]ダイエット前後の筆者 左:2009年5月(50歳、85kg)、右:2019年10月(61歳、65kg)

問題は、摂取カロリー&消費カロリーのバランスだが…

痩せるか否かは、摂取カロリーと消費カロリーのバランスで決まります。消費カロリーを上回る量を食べるから太るわけで、食べなければ確実に痩せるのです。ただし、筆者の場合、お腹は減量前より引っ込んで見た目は変わっていても、まだぽっこりしていたうえに、皮膚がブヨブヨした感じで締まりがなかったのです。

 

肥満の原因である脂肪には、胃腸や肝臓など内臓の周りにつく「内臓脂肪」と、皮膚と筋肉の間につく「皮下脂肪」があります。どちらも食べ過ぎや運動不足が原因でつきますが、内臓脂肪はつきやすい反面、筆者のように食べなければ簡単に落とせます。

 

これに対して皮下脂肪は体につきにくい反面、一度ついてしまうと落としにくく、食事制限をしただけでは落ちないのです。効果的に落とすには有酸素運動が不可欠というのが落とし穴でした。

 

そのため、効果的なダイエットにするためには、食事制限をして内臓脂肪を落とし、その後に有酸素運動で皮下脂肪を徐々に燃やしていく必要があります。これによって体がとても軽くなり、自然と階段も軽快に駆け上がれるなど運動が苦にならなくなってきます。それからトレーニングを始めると体が引き締まり、お腹の皮膚のブヨブヨも解消します。実際に、筆者もこうして今の体型になりました。

 

皮下脂肪は食事制限だけで落とせる!?

→ウソ

 

習慣にしよう!

●食べないで落とせるのは、主に内臓脂肪。皮下脂肪は食事制限だけでは落としきれないので、きれいに痩せるにはこまめに歩くなど日常的に運動する習慣をつけましょう。
●○カ月後の○○で人前に立つから痩せる、好きなブランドの服を着るために痩せる、といった目標を掲げましょう。

短期間では痩せるには「完全な断食」しか方法がない?

究極のダイエットを実践したときは、空腹との闘いで本当につらい日々でした。ところが、20㎏のダイエットに成功したことで気が緩み、リバウンドして体重が3~4㎏増えていたのです。だからといって金輪際ひもじい思いはしたくありません。筆者は新たな減量方法を探すことにしました。

 

短期間で痩せるには、単に食事量や食事の回数を減らすだけでは効果が得にくく、固形物を完全に絶つ水分だけの断食でないと、エネルギー源として内臓脂肪や皮下脂肪が使われないので、あまり痩せられないといわれています。

 

そんなときに知ったのが、糖質を制限するケトン食の存在だったのです。これは、特に精製した砂糖を使った食品や、うどんやパンなどの小麦粉を使った食品を避け、代わりにタンパク質をしっかり摂れば良いので、比較的簡単にダイエットができるというもの。

 

そこで、今度は糖質制限を取り入れ、多少は食べながらも1週間でどれくらい減量できるのか、プチ断食を試してみることにしました。

 

筆者の場合は、1週間という期限を設けての挑戦のため、朝食と昼食を抜いて食事は夕食のみ。夕食ではご飯や麺類などの炭水化物は摂らず、その代わり肉や魚、野菜などはしっかり食べるというケトン食にしました。もちろん水分は、こまめに摂っていました。また、栄養面で不足がないように、いろいろなサプリメントを摂って補うことにしたのです。

 

これでも、なんとラクだったことか。それでいて体重は着実に落ち、1週間で3㎏も体重が減ったのです。この方法をもっと早くに知っていれば、あんな無謀なダイエットをしなくて済んだのに、と悔やまれるばかりでした。

糖質を摂らない「プチ断食」なら空腹感もほぼナシ

糖質を制限すると低血糖になって危険だといわれています。しかし、糖質を摂らなければインスリンが分泌されなくなるので低血糖は起こらず、空腹感はほとんどなくなります。すると、脂肪を分解してエネルギーをつくりはじめるので、内臓脂肪も減少してきます。しかも、頭がすっきりして仕事中に集中力が途切れなくなり、むしろ体調がよくなります。これにより、糖質を摂らなくても生命を維持できることを確信しました。

 

糖質制限をすると、糖質をエネルギー源にしていた回路から、ケトン体をエネルギー源にする回路へと体が変わっていくのです。その後、この状態を維持するために1日3食摂ってもケトン食にしていると、太ることもリバウンドすることも防げることが分かりました。

 

このようなことから、ちょっと食べ過ぎて太ったと感じたときは、プチ断食で調整することで、2~3㎏のダイエットで済み、1週間もあれば体をリセットすることができます。

 

完全な断食でないと短期間では痩せられない!?

→ウソ

 

習慣にしよう!

●ダイエットを先送りにすると太り過ぎて、無謀なダイエットが必要になります。こまめに体重を量る習慣をつけ、2~3㎏増えた時点で調整するようにしましょう。
●空腹を感じることはなく、早く効果を出したいなら、タンパク質中心のケトン食ダイエットに取り組んでみましょう。

 

 

練馬桜台クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本腎臓学会 専門医
日本透析学会 専門医・指導医

1958年10月生まれ。1985年に佐賀医科大学卒業後、三井記念病院にて内科研修医、内科腎センター医員を経て、1992年に敬愛病院内科に勤務。1996年に敬愛病院副院長を務めた後、2003年に練馬桜台クリニックを開業(内科・透析・健診)。マラソンは趣味の域を超え、自己ベストは東京マラソン(2014年)にて3時間41分35秒を記録。

著者紹介

連載第一線の医師が検証&解説!超高齢化社会を元気に生きる「本当に正しい健康知識」

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

永野 正史

幻冬舎メディアコンサルティング

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