【医師が解説】「運動の前にバナナを食べると良い」は本当か?

巷では多くの健康法が噂されていますが、それらは本当に正しいのでしょうか? 本記事は『110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎MC)から一部を引用し、内科医である永野正史氏の自ら体をはった検証と、医学的な根拠を解説します。

空腹でランニングすると低血糖になるか?

マラソンなど長時間にわたって運動をするときは、食事を摂っておかないと血糖値が下がり過ぎて危険だといわれています。低血糖状態になると、冷や汗や手足の震え、頭痛が起こり、重症の場合は意識障害に陥ります。ですから空腹で走ってはいけないというのが常識です。

 

運動前にはバナナかチョコレート?
運動前にはバナナかチョコレート?

 

マラソン好きの筆者としては、とても気になるところですから検証するしかありません。そこで、絶食状態でランニングをしてみたのです。

 

ちょうど東京マラソンに向けて体を絞っておこうと思っていた時期でもあったので、トレーニングのつもりで朝食と昼食を抜き、12時間以上の絶食状態にして8㎞ほど走りました。その際、リブレという持続血糖測定器を上腕(部)に着け、走る前の血糖値を測定したあと、トレッドミルで走り始めて1㎞ごとの血糖値を測りました。

 

これを12日間続けた結果、絶食状態で走っているにもかかわらず、血糖値は下がり過ぎることがなかったのです。

 

まず、走り始めると血糖値は上昇し、走っている間はそれをキープしています。そして、走り終わると血糖値が下がると思っていたところ、逆に上がっているのです。しかも、走り終わってから15~20分くらいでピークとなり、その後は少しずつ血糖値が下がっていき、40~50分ほどで元の状態に戻りました。

 

[図表]持続血糖測定器による絶食状態での12回のランニングのデータ

筋肉を鍛えていない人は注意が必要

絶食をして糖が体内に入ってこなくなると、体内ではグリコーゲンを分解してブドウ糖を作る糖新生が起こり、どんどん糖を作り出します。しかし、走るのを止めた途端に糖が余り、その分で血糖値が上がったのです。その後、糖を作る必要がなくなると、糖新生が減ってきて血糖値も通常の状態に戻ります。つまり、体内のエネルギーのストックにより血糖値が下がることはなく、低血糖にはならないということです。

 

ただ、これは運動の習慣があり、日頃から筋肉を鍛えている人の話です。体内にエネルギーのストックがあるから可能になったことであり、運動習慣がなく筋肉が衰えている人は低血糖になる可能性が高いのです。したがって、運動の習慣がない人や高齢者で筋肉量が減っている人は、注意が必要です。

 

ちなみに、加齢により全身の筋肉量と筋力が自然に低下し、身体能力が低下した状態を「サルコペニア」といい、特に高齢者の身体機能障害や転倒のリスク因子になり得るとされています。ですから元気で長生きするには、走らないにしても筋力は鍛えて筋肉量を減らさないようにすることも必須となります。

 

空腹で走ると低血糖になる!?

→ウソ

 

習慣にしよう!

●何らかの運動習慣をつけていれば筋肉量の低下を防げ、空腹で活動しても血糖値は維持されるようになります。走ることができなくても、日頃からウォーキングなどの運動に取り組むようにしましょう。

運動前は、バナナやチョコレートを食べるのがベスト?

フルマラソンは約42㎞を走り切らないといけないので、風邪をひくなど体調を崩すのは論外として、先のエネルギー計算で分かるようにエネルギー補給が重要になってきます。

 

一流のアスリートは、足りない分をアミノ酸やブドウ糖などを入れたスペシャルドリンクで補っています。エネルギーが枯渇する30㎞を過ぎたあたりの給水所に置いておき、補給しているのです。しかし、筆者のような市民ランナーにはスペシャルドリンクはないので、自分で用意した栄養源を腰に巻いて走り、必要に応じて補給しています。

 

なかでも、バナナやチョコレートは即エネルギーになるので、運動前に食べると良いというのが常識になっています。ですから市民マラソンでも用意されていることがあります。これらは手軽で摂りやすいのですが、実際に走っているとエネルギーになるまで意外と時間を要し、効率が悪いことに気づいたのです。

ゼリーやペースト状の補食のほうが効率がいい

そこで、筆者は効率よくエネルギーが摂れる、ゼリーやペースト状になっている補食を用意しています。

 

筆者の場合、走る際に体重70㎏×約40㎞で2800キロカロリーが必要となります。このうち内臓脂肪とグリコーゲンによって2300キロカロリーのストックがあるので、最低500キロカロリーは補食しなければなりません。

 

筆者が用意している補食は、1個で約150キロカロリーあるので4個用意すれば600キロカロリーとなり、2300+600で2900キロカロリーになります。これを、15㎞を過ぎた頃から1個ずつ補給していけば、即エネルギーとなって余裕で走り切れます。

 

これは日常生活にも応用できます。忙しくて食事を摂れない状況になったときなどに、ゼリーやペースト状のもので栄養補給をすれば、効果的にエネルギーを摂取できるのです。常備しておくと、いざとなったときに役立ちます。

 

なお、マラソンではエネルギー補給とともに水分補給が大事になります。特に夏場は、しっかりと暑熱対策をしなければ乗り切れません。帽子やサングラスが必要なうえ、水のボトルを2本取って一本は給水、一本は頭や手にかけて走ります。これは、オリンピック強化委員会が推奨している暑熱対策の基本で、頭と手の平を冷やすと全身が冷えて効率が良いそうです。実際に、脱水予防にもなるので多くのアスリートが実践しています。

 

運動前のエネルギー補給はバナナやチョコレートがベスト!?

→ウソ

 

習慣にしよう!

●マラソンに取り組む際には、十分な水分補給をし、補食を摂りましょう。足が止まることなくゴールすることができます。
●ゼリーやペースト状のものを食べると効率よくエネルギー補給ができるので、外出の多い人はカバンに入れておきましょう。

 

 

 

 

練馬桜台クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本腎臓学会 専門医
日本透析学会 専門医・指導医

1958年10月生まれ。1985年に佐賀医科大学卒業後、三井記念病院にて内科研修医、内科腎センター医員を経て、1992年に敬愛病院内科に勤務。1996年に敬愛病院副院長を務めた後、2003年に練馬桜台クリニックを開業(内科・透析・健診)。マラソンは趣味の域を超え、自己ベストは東京マラソン(2014年)にて3時間41分35秒を記録。

著者紹介

連載第一線の医師が検証&解説!超高齢化社会を元気に生きる「本当に正しい健康知識」

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

永野 正史

幻冬舎メディアコンサルティング

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