回収見込みのない売掛債権は、債権放棄という手段を弾力的に活用して、早期に損金処理を行っていきたいところです。債務者の倒産といった事態の発生まで引きずると、税金面で損をする可能性もあります。

債務者倒産の場合は損失処理までに時間がかかる

会計上、万一、債務者が倒産してしまうと、売掛け金は回収不能になります。あきらめてそのまま放置しておくと、会計処理上の売掛債権は資産に計上されているので、貸倒損失として計上できず、税金がかかり、損をしてしまいます。
 
貸倒損失として処理するためには、債務者側が解散しただけでなく、残余財産の分配や清算事務の終了などを経て、はじめて貸倒損失として認められるので、時間がかかることになります。

売掛債権を放棄することで、短期間のうちに苦労なく金額を損金扱いにすることが可能になります。

債権放棄するときの注意点

債権放棄するためには、以下のような手順を踏むようにします。
 
(1)支払いの催促を何度もしたが回収できなかった証拠を残します。回収できるのに債権放棄すると、相手に贈与したことになり「寄付金」とみなされることがあります。
 
(2)通常3年ないし5年以上、相手に債務超過が続き健全化が難しいと判断されたときに「債務放棄」の条件が整ったことになります。
 
(3)「債権放棄」は証拠を残すために、「内容証明」または「配達証明」郵便で相手に通知します。文面には債権放棄の事実、契約日、商品名、商品代金、商品引渡日、商品代金の支払期限を記載し、債権放棄の日付を明記します。
 
電話または普通郵便による通知は認められず、損金処理ができなくなりますので、必ず書式にしたがって書面で通知するようにしてください。内容証明郵便の文書は同じ文面のものを3通作成し、相手、自分、郵便局に1通ずつ保管します。文書は複写でも構いません。

 

 

本連載は、2012年12月19日刊行の書籍『オーナー社長のための税金ゼロの事業承継』から抜粋したものです。2015年1月1日施行の税制改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

オーナー社長のための 税金ゼロの事業承継

オーナー社長のための 税金ゼロの事業承継

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

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