8月22日韓国政府は、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表。悪化した日韓関係は出口の見えない泥沼化の様相を呈し、これまで分けて考えられてきた「政治問題」と「経済問題」にも深刻な影響をおよぼしかねない状態だ。本記事では、その影響を受ける可能性もある韓国自動車メーカー「現代自動車(ヒュンダイ)」の日本市場再上陸計画について取り上げる。

2000年代に日本市場に参入した現代自動車だったが…

悪化する日韓関係だが、これまで政治と経済に関しては分けて考えられてきた。企業にとっては利益最大化が最も重要なミッションであり、当然、利害が一致した日韓両国企業としてはつながりを密にすることこそが重要であったからである。しかし、ここに来て雲行きは怪しい。

 

今回は自動車産業における両国の関係性、噂される韓国自動車メーカー「現代自動車(ヒュンダイ)」の日本市場再進出の背景について見ていこう。

 

さて、2018年の韓国メーカーの輸入台数(乗用車)だが、現代自動車(ヒュンダイ)が4台、起亜自動車(キア)が1台の計5台となっている(「日本自動車輸入組合(JAIA)」)。一方、韓国市場における日本車の販売台数だが、トヨタが1,578台(シェア7.7%)、ホンダが829台(同4.1%)、日産自動車が436台(同2.1%)だ(「韓国輸入自動車協会(KAIDA)」2018)。

 

例えばスマートフォン、液晶テレビをはじめとした電化製品等において、韓国製品は日本市場において存在感を見せているが、こと自動車の国内販売に関して、ここまで差がついているのはなぜか。

 

「韓国が1970年代に独自の国産車として初めての量産型として開発したのが現代自動車(ヒュンダイ)のポニーという車種でした。当時、国産をうたっていたものの、ベースになったエンジン等のパワートレインやプラットフォームは、実質的に三菱自動車の技術提供によるものです。そのような歴史的背景がある上に、日本国内の国産メーカのシェアは9割を超えます。そもそも輸入車にとって非常に難しい日本市場の攻略ですが、現代自動車は2000年代に日本市場に参入しました。正直ブランドイメージや信頼性の低さ、デザインなどトータルで考えてもユーザーに訴求できる要素少ないのではと、進出当初からささやかれていました」(業界紙記者)

 

折しも「韓流ブーム」の真っただ中。2005年には当時人気のあったぺ・ヨンジュンをイメージキャラクターに起用、4ドアセダン「ソナタ(※冬のソナタとは関係がない)」をメインに売り出す。

 

しかし、競合となるトヨタ「カムリ」やホンダ「アコード」と比較しても販売価格的なアドバンテージも少なく、10年間の累計で約15000台と苦戦が続き、60店舗前後まで販売拠点は拡大したものの、2009年に日本市場からは撤退を余儀なくされている。バスなど一部の車種について、細々と並行輸入が続いているのは前述の販売台数の通りだ。

 

韓国車の「クオリティ」が世界に認められた理由

当時、世界的にも信頼度に劣るとされていた現代自動車(ヒュンダイ)であったが、クオリティの担保のために大幅な改革を断行、さらには欧州をはじめとした主要メーカーから優秀なスタッフをヘッドハンティングして巻き返しを図る。

 

「特に部品関連の低品質には韓国独特の悪慣習が影響してたともいわれています。部品メーカーの選定においても、自動車メーカーの購買担当者に「賄賂」が渡されて決定されたという話も聞きました。また、財閥オーナー家族が経営する部品メーカーからの購入を半ば強要されるシステムがあったとも。

 

そんな自体を重くみたメーカーは、国際競争力を上げるためにの各項目のクオリティチェックを徹底、公平な競争が導入されました。外資系の部品メーカーと現代自動車(ヒュンダイ)との取引が急拡大し、エンジンやトランスミッション、そしてサスペンションの品質が飛躍的に向上したといわれています」(同)

 

さらには同業他社から優秀なデザイナーをヘッドハンティングし、世界市場に訴求するデザインの構築に着手、資金を投入して新車開発への投資、マーケティング(イメージ)戦略を敢行する。北米・欧州を中心に確固たる地位を築き、今やトヨタグループ、VWグループ、ルノー・日産・三菱、GMに続く世界5位という販売シェアを獲得するにいたったのだ。

 

「今年1月に開催された米国・デトロイトモーターショーにおいて、北米カー・オブ・ザ・イヤー(NACOTY)が発表され、乗用車部門で韓国の現代自動車(ヒュンダイ)の高級車ブランド、ジェネシス「G70」、SUV部門でも、ヒュンダイ「コナ/コナEV」が受賞、史上初の2部門を果たしました。韓国車のクオリティはいまや世界に認められています。さらに、満を持しての日本市場への再進出へのとっかかりとして、この10月24日から開催される東京モーターショーへの参加も表明していました」(同)

 

前述の通り、ブランドイメージでは、なかなか日本国内のシェアを崩すことが難しかった現代自動車(ヒュンダイ)だが、今回の東京モーターショーへ出展する際の目玉として、世界初の量産型水素電気自動車である『ネキソ(Nexo)』を全面に押し出すといわれている。

 

トヨタ・MIRAIなど日本車がリードする分野でもある燃料電池車(FCV)で、航続距離も日本車を大きく上回るとされている。防弾少年団が全米ヒットチャートの1位になるなど、日本の若い世代にとって、韓国カルチャーはクールという認識であり、上の世代ほどアレルギーはない。今回のネキソ(Nexo)は、見た目は一見いかついSUVながら、究極のエコカーというスタイルで若年層をターゲットとするのか、いずれにせよ勝算があってこその日本市場再上陸計画であろうと業界では見られていた。

 

しかし先日、その現代自動車(ヒュンダイ)が「東京モーターショー」への不参加の方針を明らかにしたと報じられた(韓国『マネートゥデイ』7月25日)。背景に「日本による対韓国輸出規制の強化措置」の影響があるのではないかといわれているが、「現代自動車関係者は『細部事項などを総合的に考慮して参加するかどうか決める』」(同)としており、事態は流動的だ。

 

世界の現代自動車(ヒュンダイ)としての余裕を見せて、参加するのか。日本市場進出自体を白紙に戻すのか。日韓関係の行方とともに注目していきたい。

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