不良在庫でも株価押し上げの要因に
3年間の研究開発を経て、自信を持って製造・販売した商品。ところがまったく売れずに倉庫にうずたかく積まれ、不良在庫の山に……。手塩にかけた商品だからなかなか捨てられない気持ちはよく理解できます。でも、そんな不良在庫が眠っているときは、事業承継のタイミングのよい機会と考え、思い切って処分してください。
不良資産など売れる見込みがないものを、何もしないでそのまま在庫にしておくと、会計上の資産としてプラスされてしまいます。1000万円の価値があるといっても、売れないものをそのままもっていれば1000万円として評価され、それが株価評価に反映してしまうのです。
在庫処分すれば、逆に1000万円を商品廃棄損として処理することができるので、不良在庫のまま残しておくよりもダブルの効果を生みます。
不良在庫や滞留資産の処分は必ず証拠を残す
商品廃棄損はもちろんのこと、B/S上の棚卸資産は税務調査ではとくに細部までチェックが入る項目なので、最新の注意が必要です。税務調査のときに商品廃棄損について確認されるのは、以下のような点です。
(1)廃棄理由が妥当かどうかを確認します。流行おくれになってしまったとか不良品であるなどの合理的な理由がない限り、廃棄が妥当とは認められません。会社にとって大事な棚卸資産を廃棄することは考えにくい、という考え方です。
(2)期末までに廃棄が行われたことを証明できる書類を確認します。廃棄業者から受け取った原始記録(取引の最初の記録)や、社内稟議書などから廃棄が事実であるか調べます。廃棄したフリをして商品を隠していないかを確認するために、裁断している写真などを証拠として撮っておくことも必要です。
また、どんなに廃棄理由が妥当であったとしても、実際に期末までに廃棄が行われていないと、その間に経費に計上することはできません。事業承継に合わせて行う場合は、スケジュールをしっかり押さえ、計画的に進める必要があります。