金融庁が「老後は約2000万円必要」とも読み取れる報告書を発表して以来、「資産運用」への注目が高まっています。運用には金融機関を頼りたいところですが、2019年6月には、株式会社ゆうちょ銀行が、高齢者に投資信託の不適切な販売をしていたことが発覚。「誰の何を信じていいのかわからない…」と戸惑っている方も多いのではないでしょうか。そんな折、ひとつの選択肢として挙げられるのが「IFA」(独立系フィナンシャル・アドバイザー/Independent Financial Advisor)の存在です。本記事では、IFAに関わる基礎知識を紹介します。

IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)を知る

(1)「IFA」とは?

 

IFAとは、独立系ファイナンシャル・アドバイザー/Independent Financial Advisorの略で、特定の金融機関に属さず、独立・中立的な立場から顧客に資産運用のアドバイスを行う専門家です。

 

IFAは、内閣総理大臣の登録を受け、証券会社などの金融商品取引業者と業務委託契約を締結し、有価証券(上場株式、投信、債券等)の売買の媒介(仲介)などを行うことができます。

 

[図表1]IFAとは?
[図表1]IFAとは?

 

(2)日本のIFA

日本のIFAは、2004年4月に金融商品仲介業(当初は証券仲介業)制度が導入されたことで始まりました。目的として、販売チャネルの多様化が挙げられ、既存の金融機関以外の独立した立場で顧客に提案ができるようになりました。

 

米国では約30年前から普及し始め、証券会社の営業員の数と同数まで増加しています。米国のIFAは30万人に達していますが、日本ではまだ4000人程度です。

 

[図表2]日本における投資信託販売チャンネル利用状況(重複回答) 資料:日本証券業協会 2015年 証券投資に関する全国調査
[図表2]日本における投資信託販売チャネル利用状況(重複回答)
資料:日本証券業協会 2015年 証券投資に関する全国調査
出所:金融庁「事務局説明資料」 

 

[図表3]米国における投資信託販売チャンネル利用状況(重複回答) 資料:米国投資信託協会(Investment Company Institute)RESEARCH PERSPECTIVE FEBRUARY 2013
[図表3]米国における投資信託販売チャネル利用状況(重複回答)
資料:米国投資信託協会(Investment Company institute)
RESEARCH PERSPECTIVE FEBRUARY 2013
出所:金融庁「事務局説明資料」 

 

金融庁は販売会社等とは独立した立場でアドバイスする者などが対応できるような環境整備が必要であると提言しています。

 

<顧客が合理的な判断に基づき資産形成を行うためには、販売会社等とは独立した立場で顧客に対してアドバイスする者など、顧客による金融商品・サービスの適切な選択を手助けする担い手の多様化が重要である。>(平成28年12月22日 金融審議会 市場ワーキング・ グループ報告)

 

(3)IFAとは、何を相談するための人なのか?

 

IFAに相談する内容の多くは、次のようなケースです。

 

① これから資産運用を始めようと思っているが、どうしたらいいか悩んでいる

② 資産を少しずつ、ゆっくり着実に育てていきたい

③ 資産を次の世代にしっかりつないでいきたい

④ 金融の情報が多すぎて、何が正解なのかわからず困っている

⑤ 長く付き合える資産運用のプロからのアドバイスが欲しい

⑥ 投資信託のしくみがよくわからない

⑦ 保有している投資信託について見直しを検討したい

⑧ 銀行・証券会社からすすめられた商品で損失がでている

 

以上の内容をじっくりと相談できる相手をなかなか見つけられない人が多く、IFAはその相談相手、つまり「お金のかかりつけ医」ともいえる存在です。

 

(4)IFAに相談するメリット

 

特定の金融機関に所属していないので、会社の営業方針に縛られず、公正・中立な立場で顧客へアドバイスができます。また、転勤や人事異動が原則ないので、顧客との長期的なリレーションを構築することが可能です。

 

さらに、既存の金融機関のなかには、グループ内に運用会社を持っているケースがあります。その場合、グループ内の運用会社の投資信託を優先して販売する可能性もあります。IFAの場合このような関係はなく、顧客の利益を優先し、優れた商品を選択することが可能です。

 

(5)IFAに相談するデメリット

 

ネット経由での取引に比べると、手数料が高くなることもあります。たとえば、ネット経由だと手数料がゼロになる商品が、IFA経由では料金が発生するようなケースです。これは、IFAのアドバイス/コンサルティングの対価と考えることもできますが、最終的には顧客の判断になります。

 

IFAは独立した組織です。これはメリットでもありますが、人によって金融知識やアドバイスの内容に差がでることもあり、有能なIFAの見極めが難しい面もあります。

 

(5)IFAへの報酬はいくら払う?

 

顧客が金融商品取引業者に支払った手数料の一部を、IFAは業務委託報酬として受け取ります。IFAが顧客から相談料などをもらうことは通常ありません。それで中立性が保たれるのか?という疑問が残りますが、金融商品の数は膨大にあるので、「どの取引業者を選ぶか」よりも「どの商品を選ぶか」の部分での、良きアドバイザーと見るべきでしょう。もちろん、IFAの業務提携先である金融取引業者が一つとは限りませんので、中立性はそこで担保されているともいえます。

 

(6)IFAが開催するセミナーはどのようなものか?

 

IFAが単独で行うセミナーや、特色のある運用会社と共同で行うセミナーなどさまざまです。投資信託にスポットを当てたもの、運用全般の考え方、つみたてNISAなど個別のテーマに特化した内容など、各社工夫して開催しています。

IFAとFP(ファイナンシャルプランナー)の違いは?

FP(Financal Plnanner/ファイナンシャルプランナー)は、顧客の希望するライフプランを実現するために、総合的なマネープランを提案することを主たる業務にしています。金融商品仲介業や投資助言代理業ではないため、具体的な商品名を挙げて勧誘することはできません。

 

一方、IFAは顧客の希望に応じたファイナンシャルプランを案内し、次に資産全体のアロケーションを提案し、提携している金融機関で取り扱っている最適な金融商品の売買の仲介を行うことが可能です。資産運用に関しては、具体的な商品の選別、売買の仲介、アフターフォローまで長期にわたりサポートします。

IFAにはどのような人がなるのか?

既存の金融機関に所属している人が、独立してIFAになる理由として、以下のような要因が考えられます。

 

[図表4]IFAと既存金融機関の違い
[図表4]IFAと既存金融機関の違い一覧

 

さまざまなしがらみを取り払い、顧客のためになるアドバイスを行いたいとの思いで独立するケースが多く見受けられます。

 

(1)IFAになるには資格が必要?

 

取り扱う商品によって、証券外務員一種または二種の資格が必要です。

 

(2)IFAの実際の平均年収は?

 

IFAの給与体系は正社員型と業務委託型の2種類にわかれます。正社員型は、採用する会社により決まりますので、業務委託型について説明します。

 

業務委託型は、契約している金融商品取引業者から受け取る業務委託報酬の一定割合が営業員の給料になります。

 

たとえば、投資信託の残高30億円を管理しているIFAの場合、信託報酬が年率0.5%として1,500万円。その60%を報酬として受け取った場合、年間900万円が収入になります。このベースがあれば、顧客に寄り添った長期的な提案も可能になることでしょう。

 

 

本連載は、投資を促したり、筆者が所属する「幻冬舎アセットマネジメント」に勧誘することを目的としたものではありません。また、投資にはリスクがあります。リスクに十分に考慮をして、投資判断を行ってください。著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

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