印紙税の税務調査…その実態とは?

本連載では、元・国税調査官の佐藤明弘氏による著書『税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜』(第一法規)より一部を抜粋し、税務調査官の目線から、印紙税調査の際に注意すべきポイントや、税務調査で指摘される実務上誤りやすい取扱いについて不納付事例をもとに紹介します。

印紙税の税務調査で確認されることとは?

1 印紙税調査の概要

 

印紙税は法人及び個人事業者のほか、サラリーマン等の一般個人も納税者となるケースがあり、調査の対象者が広範囲に及び、また、課税対象となる文書が多種多様である一方で、納税者自らがその作成する文書の課否を判定し、原則として、収入印紙を自ら貼付して消印することで納付が完結するという、自主納付制度が採用されています。

 

このような印紙税の性格から、税務当局においては、できるだけ多くの納税者と効率的に接触し、印紙税のコンプライアンスの維持・向上を図ることが課題とされています。

 

印紙税の調査は、所得税や法人税の調査のように、申告された所得金額が適正かどうかを確認するのとは異なり、①作成された文書が課税文書に該当するのか否か、②作成された課税文書に適正な金額の収入印紙が貼付されているか否かを確認するために実施されます。

 

したがって、印紙税の調査では、①調査対象先となる企業等が日常業務で作成している文書の把握、②把握した文書の課否判定、③適正な印紙貼付等の有無の確認のため、他の税目の調査にはない調査手法が用いられることとなります。

 

2 印紙税の税務調査権限

 

印紙税法では、作成される契約書などに正しく印紙が貼付されているか否かを調査できるよう、税務職員に対してその調査権限が与えられており、国税庁等の当該職員は印紙税に関する調査について必要があるときは、次に掲げる行為をすることができるとされています(国税通則法74条の5第1項5号)。

 

①印紙税法の規定による印紙税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

 

②課税文書の交付を受けた者若しくは課税文書の交付を受けたと認められる者に対して質問し、当該課税文書を検査し、又は当該課税文書(その写しを含みます。)の提示若しくは提出を求めること。

 

③印紙税法第10条第1項(印紙税納付計器の使用による納付の特例)に規定する印紙税納付計器の販売業者若しくは同項に規定する納付印の製造業者若しくは販売業者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

 

[参考]印紙税納付計器の販売業者若しくは納付印の製造業者若しくは販売業者に対する質問検査は、例えば、印紙税の納税義務者に販売された納付計器の不具合が報告された場合など製造業者等への確認が必要となる場合や、納付印の印影の形式が財務省令の規定に合致しないなどで、納付印の印影が紛らわしいものや、偽造が疑われるといった印紙税法第16条(納付印の製造等の禁止)の規定に触れる可能性があるといった特殊な事案の場合に行われます。

 

3 印紙税調査の体系

 

印紙税調査の体系は、「印紙税単独調査」と、所得税や法人税等の調査の際に併せて実施する「印紙税同時処理」とに大別されます。

 

(1)印紙税単独調査

 

「印紙税単独調査」は、印紙税についてのみ特化した調査を実施するもので、おおむね以下に掲げる者を調査対象者として実施され、調査の結果、印紙税の不納付などがあった場合には過怠税が賦課されることとなります。

 

①原則として、資本金の額が1億円以上の法人、売上規模の大きい法人又は不納付文書等に係る資料情報がある者

 

②使用済み印紙の再使用等、不納付の形態が悪質と認められる者、印紙税の納税義務を十分に認識しながら意図的に納付を怠っていると認められる者など

 

③印紙税法第10条第1項(印紙税納付計器の使用による納付の特例)、第11条第1項(書式表示による申告及び納付の特例)、第12条(預貯金通帳等に係る申告及び納付等の特例)に規定する納付の特例を適用して申告・納付を行っている者など、多くの課税文書の作成を行っていると認められる者

 

(2)印紙税同時処理

 

一方、「印紙税同時処理」は、所得税や法人税等の調査に併せて同時に実施されるものですから、上記(1)の①~③の者以外の者であっても対象となり、課税文書に印紙の貼付がない場合などには過怠税の賦課徴収がなされます。

 

4 印紙税調査の所掌部署

 

印紙税の納税義務者に対する税務調査を適正・公平にかつ効率的に実施していくため、企業の規模の大小などに応じて、国税局又は税務署のいずれかの職員が担当することとなっています。

 

(1)国税局職員が調査する納税者

 

国税局の職員が調査する企業は、原則として資本金50億円以上の大企業の会社や、資本金50億円未満の企業で国税局長が特に指定する企業(課税文書の作成が多量にあると見込まれる企業など)となります。

 

具体的な所掌部署は、各国税局の課税部(課税第二部)にある間接諸税担当調査部門又は消費税課(間税課)に所属する職員です。

 

(2)税務署職員が調査する納税者

 

(1)以外の企業(国税局所管から署所管に所掌変えとなった企業なども含まれます。)に対しては、税務署の法人課税部門職員、個人課税部門職員、資産課税部門職員が担当しています。

税務調査の前に行うべき準備とは?

5 調査の事前通知等の手続

 

(1)事前通知と税理士の事務手続

 

調査官は、国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)の規定により、調査手続の透明性と納税者の予見可能性を高める観点から、他の税目同様に原則として事前通知を行います。

 

なお、法令上の事前通知が必要となる税務代理人は、税理士法上の税務代理権限証書を提出している者とされていますが、同法上、印紙税については、税務代理の対象税目とはされていないことから、税理士であっても税務代理人となることはできません。

 

したがって、印紙税単独調査の場合には、法令上、税理士への事前通知はなされず、納税者に対して直接通知が行われます。

 

このため、税理士は納税者からの連絡によって印紙税の調査があることを知らされることとなりますから、調査官からの事前通知内容を、納税者から詳しく聞き取り、調査対応準備への的確なアドバイスを行う必要があります。

 

また、印紙税同時処理においては、所得税や法人税の調査に併せて実施されるものであることから、事前通知の段階においては通知税目から除かれており、所得税や法人税の調査を遂行する過程で、印紙税の不納付文書が把握され印紙税についても調査が必要と判断された場合に、調査対象税目の追加ということで、調査官から納税者に対して調査通知がなされるのが一般的です。

 

(2)書類の準備依頼

 

大規模法人などへの単独調査の事前通知の際には、調査を効率的に実施するため、調査官から次に掲げる文書など、必要書類の事前準備の依頼がある場合がありますので、可能な限り事前に取り揃えて、効率的な調査に協力することが求められます。

 

①会社案内

②会社組織図

③支店等の所在地一覧

④有価証券報告書又は決算書類

⑤事務規定(代表者印取扱規定、文書取扱規定、事務取扱マニュアル、社内通達、社内事務研修資料など)

⑥代表者印、部長印の捺印簿など

⑦収入印紙受払簿

⑧事務処理システム関係のマニュアルなど

⑨契約書、領収書などの様式集(ひな型集)など

 

連載元・国税調査官が教える「印紙税」対策のポイント

本連載は、2018年9月30日刊行の書籍『税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜』(第一法規)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜

税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜

佐藤 明弘

第一法規

国税当局での実務経験豊かな著者が、税務調査で指摘された実務上誤りやすい印紙税の取扱いについて、具体的な契約書例を示しながら解説した書籍。「契約書をこのように変更すれば印紙税の負担を軽減できる」等、顧問先に喜ばれ…

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