キーワードで学ぶ不動産学~「特定街区」「防火地域」

相川 眞一
キーワードで学ぶ不動産学~「特定街区」「防火地域」

今回は、「伝統的建造物群保存地区」や「宅地造成工事規制区域」等のキーワードについて解説します。※本連載は、大阪学院大学経済学部准教授 相川眞一氏の著書、『ゼロからの不動産学入門』(創成社)の中から一部を抜粋し、関連するキーワードを軸に、不動産学の基本を学んでいきます。

道路上では私権を行使できないが・・・

<道路一体建物>

道路法によると、道路上に私権を行使できない。人や物を輸送するという本来の公共的な目的を維持するためである。ところが、写真1は、道路がビルを貫通している。もともとこの敷地は大阪市の市有地であったが、A社と阪神高速道路公団が取得を希望した。A社はビルを建築するために、阪神高速は高架道路を通すために。大阪市は、両者の希望実現のために粋な決断をした。土地はA社に売りA社にビルを建築させるのだが、「阪神高速さんに道路の一定空間を無料で使用(使用貸借権の設定)させなさい」という条件を付したそうだ。いかにも、花を捨て実を取る大阪人の合理的精神が感じられる。

 

[写真1]

 

<特定街区>

特定街区とは、市街地の整備改善を図るため街区の整備または造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率ならびに建築物の高さの最高限度および壁面の位置の制限を定める地区である。簡単に言うと超高層ビル街で、代表例は写真2の新宿都庁周辺である。この辺りは、「東洋の摩天楼」と呼ばれている。超高層ビルの壁は、自然の風向きを変えてしまう。風向きが変わると気象も変わる。近年、ゲリラ豪雨等の異常気象が増加しているのも超高層ビルが原因と言われている。そこで、設計に前後して模型を造り、扇風機で風を当てる実験を繰り返し、自然の風向きをなるべく変えない形・向き等を考察し、ビルを建てることが多いとされている。

 

[図表2]

 

<特定工作物>

特定工作物には、第一種特定工作物・第二種特定工作物の2種類があり、前者はコンクリートプラント(生コンクリートの工場)・クラッシャープラント(採石・砕石処理場)等で、後者は1ヘクタール以上の運動・レジャー施設、1ヘクタール以上の墓園である。

 

1ヘクタールとは10,000㎡、1アールは100㎡である。1ヘクタールと言ってもピンとこない。私がよく行く甲子園球場(写真3参照)のグラウンド部分が約13,000㎡である。余談で恐縮だが、ライト側の屋内練習場の壁にはファンクラブの会員名が掲示されているが、私の名前が1番目にある。何せ、五十音順であるから。

 

[写真3]

防火地域に指定されると木造建物は建築できない⁉

<風致地区>

都市の風致を維持するため定める地区である。風致を維持とは、枕草子によく出てくる「いとおかし」というような自然の美・情趣・おもむき等を守る意味合いである。写真4は、1926年にわが国初の風致地区に指定された神宮外苑周辺の、2017年11月現在の様子である。急ピッチで国立競技場が建設されている。この区域内で建築物の建築・宅地造成・木竹の伐採・水面の埋立て・土石の採取等をすることは、地方公共団体(市町村・都道府県等)の条例で規制されている。「春の小川はさらさらいくよ・・・」の童謡のモデルと言われている渋谷川は、この近くで暗渠になっているらしい。

 

[写真4]

 

<防火地域>

防火地域とは、市街地における火災の危険を防除するために定める地域である。写真5は、大阪は難波の道頓堀の風景である。昔、阪神が優勝した時に多くの人々が飛び込んだ伝説の場所である。このあたりは人通りが多く、火災が発生したら大変である。そこで、防火地域に指定されている。防火地域に指定されると、原則として木造建物は建築できない。故に、もし火災が発生しても安心である。さらに、看板等の材料も防火材料(不燃材料・準不燃材料・難燃材料)のうち一番厳しい不燃材料でつくるか、またはおおわなければならない(準防火地域には、このような規制はない)。

 

[写真5]

 

国家試験にチャレンジ!①(宅地建物取引士試験・1987年・一部改題)

 

次の記述のうち、都市計画法による開発許可を必要としない開発行為はどれか。

 

1 市街化調整区域において行う開発行為で一定規模に満たないもの
2 市街化区域内において行う開発行為で、農業を営む者の住宅建築目的で行うもの
3 学校の建築の用に供する目的で行う開発行為
4 土地区画整理事業の施行として行う開発行為

 

正解は、4である。

 

国家試験にチャレンジ!②(宅地建物取引士試験・1986年・一部改題)

 

都市計画法に定める地域地区に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

1 第一種住居地域は、中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域で
ある。
2 工業地域は、主として工業の利便を保護するため定める地域である。
3 高度利用地区は、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地域である。
4 風致地区は、都市の風致を維持するため定める地区である。

 

正解は、3である。

ゼロからの不動産学講義

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相川 眞一

創成社

民法・租税法や建築工学のほか、地理・地学など周辺科目もカバー。宅地建物取引士試験などの問題も掲載しているため、習得度合いの確認にも役立ちます。「不動産学の入門書」として最適な一冊です。

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