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大手企業を退職した元部長、予想外の転身
「部長! 何やってるんですか?」
都内のオフィス街で信号待ちをしていた高橋修さん(65歳・仮名)は、背後から突然声をかけられました。振り返ると、数カ月前まで勤めていた大手メーカーの元部下が、驚きの表情で立ち尽くす姿があります。
高橋さんが身につけていたのは、スポーツウェアにヘルメット、そして背中の大型配達バッグです。スマートフォンを見ながら自転車にまたがる姿は、オフィスで数十人の部下を率いていた頃の様子とは大きく異なっていました。
「健康のためにと数年前から自転車を始めて。その延長で何かできないか、考えていました」
高橋さんは役員手前の部長職まで上り詰め、定年退職を迎えました。退職金を含めた現在の貯金額は4,200万円ほどだといいます。また65歳になって受給を始めた年金は月20万円ほど。あと2年すると、妻も年金を受け取るようになり、受取額は合わせて月30万円ほどになる見込みです。
客観的に見れば、経済的に恵まれた元エリートが体力勝負の配達員をする姿は、異例に映るかもしれません。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、収入を伴う仕事をしている高齢者の割合は42.7%。就労の主な理由をみると、「収入のため」(55.1%)が最多ですが、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」(20.1%)や「自分の知識・能力を生かせるから」(12.4%)が続いています。また、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」と回答した層では、「働けるうちはいつまでも働きたい」とする割合が36.2%に達しています。経済的な事情にとどまらず、健康維持や能力の発揮を目的として自発的に就労を選択するケースも珍しくありません。
「仕事を辞めて一番つらかったのは暇なこと。仕事を辞める前は、旅行に行って、ゴルフに行ってとか考えていましたが、毎日毎日というわけにはいきません。結局、何もすることがなく、家でぼーっとすることになります」
そのような日々をどうにか変えたいと選んだのが、趣味の延長であるフードデリバリーの仕事だったのです。