「また泊まりに行くね」娘からの連絡に気が重くなった母
72歳の和枝さん(仮名)は、74歳の夫・修一さん(仮名)と地方都市の一戸建てで暮らしています。
夫婦の年金収入は合わせて月約23万円。住宅ローンは完済しており、預貯金は約900万円あります。
2人には、37歳の長女・理恵さん(仮名)がいます。
理恵さんは夫と小学3年生の長男、5歳の長女の4人暮らし。実家から車で約2時間の場所に住んでいます。
以前から連休になると家族で帰省しており、和枝さん夫婦も孫たちに会えるのを楽しみにしていました。
「小さいころは、玄関を開けるなり『おばあちゃん!』って飛びついてきてね。あの声を聞くのがうれしかったんです」
しかし、ここ2年ほどで、帰省を迎えることが少しずつ負担になってきたといいます。
娘一家が来るのは、たいてい2泊3日。和枝さんは数日前から客間を掃除し、布団を干して、人数分の食事を考えます。
孫たちは食べ盛りで、普段の夫婦2人の食卓とは勝手が違います。
「娘たちが来るから、すき焼きにしようとか、お刺身も用意しようとか。せっかくなら喜んでもらいたいと思ってしまうんです」
買い物に行けば、肉や魚、お菓子、飲み物などであっという間に1万円を超えます。3日間の食費や日用品代を合わせると、普段より2万〜3万円ほど多くかかることもありました。
理恵さんも手土産を持参し、食後の片付けを手伝うことはあります。ただ、朝食の準備や洗濯、帰省後の寝具の片付けなどは、ほとんど和枝さんが担っていました。
「娘も子どもの世話で忙しいし、帰ってきたときくらい休ませてあげたいと思っていたんです」
修一さんも孫の相手をしますが、数年前に腰を痛めてからは、重い布団を運ぶことが難しくなりました。
和枝さん自身も、以前ほど体力がありません。前回の連休には、娘一家が帰った翌日、疲れが抜けず、夕方まで横になっていたそうです。
「夫に『もう無理しなくていいんじゃないか』と言われたんです。でも、娘に帰ってこないでとは言えなくて」
そんな折、理恵さんから次の連休についてLINEが届きました。
「今度の3連休、またみんなで泊まりに行ってもいい?」
和枝さんはすぐに返事ができませんでした。
孫には会いたい。それでも、また数日間の準備と片付けが待っていると思うと、気が重くなったのです。
夫と相談した末、和枝さんは初めて、娘にこう伝えました。
「次の連休は、帰ってこなくていいよ。お父さんと2人でゆっくりしたいから」
