(※写真はイメージです/PIXTA)

連休になると、離れて暮らす子どもや孫が実家に集まる家庭もあるでしょう。久しぶりの再会は親にとって楽しみなものですが、迎える側には食事の準備や掃除、寝具の用意など、普段とは異なる負担が生じます。年齢を重ねるにつれ、以前は苦にならなかったことが難しくなる場合も。長年続いてきた帰省の習慣を、親の側から見直したいと考えることもあるようです。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「来ないでと言うのは勇気がいりました」帰省を断った母の決断

和枝さんのLINEを読んだ理恵さんは、驚いて電話をかけてきました。

 

「どうしたの? 何かあった?」

 

「何もないよ。ただ、最近ちょっと疲れやすくなってね」

 

すると理恵さんは、不安そうに尋ねました。

 

「私たち、帰ってきてほしくないってこと?」

 

その言葉に、和枝さんは胸が痛んだそうです。

 

「孫たちに会うのは楽しみなのよ。でも、泊まりに来るとなると、準備が大変になってきたの」

 

和枝さんは、これまで言えなかった気持ちを少しずつ話しました。

 

年金月23万円から税金や社会保険料が引かれ、夫婦が使えるお金は月21万円ほど。普段の生活費は月約20万円で、住宅の修繕費や冠婚葬祭などは貯蓄から出しています。

 

「帰省のたびに何万円も使うのが、最近は気になってきたの。それに、3日間ずっと台所に立っていると、次の日まで疲れちゃう」

 

総務省統計局『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヵ月当たりの可処分所得が22万1,544円、消費支出が26万3,979円となっており、月平均4万2,435円の不足が生じています。

 

高齢夫婦の家計では、日常の生活費に加えて、帰省時の食費などの臨時支出も考慮する必要があります。

 

理恵さんは、母の話を黙って聞いていました。そして少し間を置いてから言いました。

 

「そんなに大変だったんだね。全然気づかなかった」

 

理恵さんにとって実家は、子どものころと変わらず、気兼ねなく帰れる場所でした。

 

「お母さん、いつも楽しそうにしてたから。準備も好きでやってくれてるんだと思ってた」

 

和枝さんは「私も、もっと早く言えばよかったね」と答えました。

 

話し合いの結果、次の連休は帰省を見送り、その代わり翌月に日帰りで会うことになりました。

 

昼食は外で食べ、費用はそれぞれで負担。実家に立ち寄る場合も、長時間の滞在は避けることにしたそうです。

 

「孫たちが泊まりたいと言ったらどうしようかと思いましたけど、娘が説明してくれるそうです」

 

和枝さんは、少し安心した表情を見せます。

 

一方で、帰省の予定がなくなった連休には、どこか寂しさも感じたといいます。

 

「いつもなら、そろそろ布団を出しているころだなって。でも、その日は夫とゆっくり散歩に出かけました」

 

修一さんは「たまにはこういう連休もいいな」と笑っていたそうです。和枝さんも、今後は体力や家計の状況に合わせて、娘一家との交流を続けたいと考えています。

 

「来ないでと言うのは勇気がいりました。でも、無理をして嫌な気持ちになる前に話せてよかったです」

 

親が高齢になると、子どもや孫を迎えるための準備が、以前より大きな負担になることがあります。帰省する側も、親がこれまでと同じように動けるとは限らないことを意識する必要があるでしょう。

 

家族で過ごす時間を長く楽しむためにも、宿泊日数や食費の分担、家事の役割などを話し合い、それぞれに無理のない形を見つけていくことが大切です。

 

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