(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが独立し、孫が生まれてからも、家族旅行を楽しみにしている高齢者は少なくありません。年に一度の旅行であれば、多少費用がかかっても構わないと考える人もいるでしょう。しかし年金生活が長くなるにつれ、将来の支出が気になり始めることもあります。旅行費用の負担を見直したことをきっかけに、家族との付き合い方が変わる場合もあるようです。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「旅行がなくなったら、会う機会も減った」母が感じた寂しさ

夏休みが近づいても、裕介さんから旅行の連絡はありませんでした。千鶴子さんが電話で尋ねると、息子は申し訳なさそうに話しました。

 

「今年は上の子の部活もあるし、家族旅行は見送ろうと思ってる。みんなの予定が合わなくて」

 

千鶴子さんも、孫たちが忙しくなっていることは知っていました。それでも毎年当たり前のように続いていた旅行がなくなると、思った以上に寂しさを感じたといいます。

 

「お金を出さなくなった途端に、旅行の話がなくなってしまったので。やっぱり私が払うから来てくれていたのかなって」

 

その年の夏休み、孫たちは一度も泊まりに来ませんでした。以前は旅行の前後に実家へ立ち寄り、夕食を一緒に食べることもありましたが、今年はそうした機会もなくなったのです。

 

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上の人のうち、子や孫の生活費を「ほとんど負担している」「一部を負担している」と回答した人の合計は25.2%でした。

 

この数値は旅行代の負担を示すものではありませんが、高齢者が子や孫のために経済的な支援を行っている実態がうかがえます。

 

千鶴子さんは、旅行をやめたことが原因で息子一家との関係が薄くなったのではないかと考えるようになりました。

 

そんなある日、裕介さんから電話がありました。

 

「今度の日曜、そっちに行ってもいい? 子どもたちもおばあちゃんに会いたいって」

 

久しぶりの訪問を喜んだ千鶴子さんは、思い切って旅行のことを聞いてみました。

 

「お母さんがお金を出さなくなったから、行かなくなったの?」

 

裕介さんは、慌てて否定しました。

 

「そういうわけじゃないよ。ただ5人分の宿泊費を考えると、うちだけじゃ簡単には決められなくて。子どもたちの予定も合わなくなってきたし」

 

これまで母親が費用を負担してくれることに甘えていたと、裕介さんは認めました。

 

「毎年出してもらうのが当たり前になってた。ごめん」

 

千鶴子さんも、旅行がなくなってから会う機会まで減ったことが寂しかったと伝えました。

 

その日2人は今後のことを話し合い、旅行にこだわらず、月に一度くらいは一緒に食事をしようと約束したそうです。

 

ただ実際には孫たちの部活動や習い事もあり、全員が集まれる日は以前ほど多くありません。

 

「孫たちも大きくなったんですよね。昔みたいに、いつでもおばあちゃんと出かけたい年齢ではなくなったんだと思います」

 

千鶴子さんは少し寂しそうに笑います。

 

家族旅行は、離れて暮らす親子や孫がまとまった時間を過ごせる貴重な機会です。一方、費用を一人で負担し続ければ、将来の生活資金に影響することもあります。

 

子どもの成長とともに家族の予定や過ごし方も変わっていきます。無理のない費用負担を考えながら、食事や短時間の訪問など、それぞれの暮らしに合った交流の機会を見つけていくことが大切でしょう。

 

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