(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を目前に控える50代後半は、その後の暮らし方を具体的に考え始める時期です。住宅ローンの完済や子どもの独立を機に、60歳で仕事を辞め、趣味や旅行を楽しみたいと考える人もいるでしょう。しかし年金の受給見込額を確認してみると、想定していた生活費との間に差があることも。退職まで残り数年となってから、計画の見直しを迫られるケースもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「えっ、これだけなのか?」57歳会社員が確認した将来の年金

57歳の俊彦さん(仮名)は、製造業に勤める会社員です。現在の年収は約620万円。妻の久美子さん(55歳)と2人で暮らしています。

 

大学を卒業してから約35年間、同じ会社で働いてきました。現在は管理部門の課長を務めていますが、60歳の定年を機に仕事を辞めるつもりでいました。

 

「ずっと仕事中心の生活だったので、60歳になったら自由に過ごしたかったんです」

 

夫婦の楽しみは旅行です。子どもが小さいころは家族旅行に出かけていましたが、ここ十数年は仕事の都合で遠出する機会が減っていました。

 

子ども2人はすでに独立し、住宅ローンもあと2年ほどで完済する予定です。定年後には妻と国内各地を旅行し、以前から興味のあった家庭菜園も始めたいと考えていました。

 

退職金の見込額は約1,800万円。現在の預貯金は約1,200万円あります。

 

「合わせて3,000万円あれば、65歳までの5年間は十分に暮らせると思っていました」

 

そんな俊彦さんが年金について改めて考えるきっかけになったのは、会社の退職準備セミナーでした。講師から「年金の見込額を確認して、退職後の収支を計算してみましょう」と言われ、帰宅後に「ねんきんネット」を利用してみたのです。

 

そこで表示されたのは、現在の働き方を60歳まで続け、その後は厚生年金に加入せず、65歳から受給する場合、俊彦さん自身の年金が月約15万5,000円になるという試算でした。

 

「えっ、これだけなのか?」

 

俊彦さんは、思わず画面を見直したそうです。

 

これまで年金について詳しく調べたことはなく、長年会社員として働いてきたのだから、月20万円程度は受け取れるものと思い込んでいました。

 

「勝手にそう思っていただけで、根拠はなかったんですけどね」

 

妻の久美子さんは結婚後、パート勤務を中心に働いてきました。自身の年金は65歳から月約7万円を見込んでいます。

 

ただし、妻は俊彦さんより2歳年下です。俊彦さんが65歳になった時点では、久美子さんはまだ63歳。夫婦ともに65歳から受給する前提でも、年金がそろうまでには時間があります。

 

その晩、俊彦さんは妻に年金の試算結果を見せました。

 

「俺の年金、思っていたより少なかった。60歳で辞める計画、ちょっと考え直したほうがいいかもしれない」

 

久美子さんも、金額を見て驚いたといいます。

 

「私たち、毎月いくら使っているか、ちゃんと分かっていないよね」

 

夫婦は翌週末、通帳やカードの利用明細を広げ、退職後の生活費を計算することにしました。

次ページ「お金が足りなくなったら…」妻の一言で変わった定年後の計画

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