「預金だけでは増えない」退職金を受け取った男性の選択
65歳の昭夫さん(仮名)は、5年前に長年勤めたメーカーを定年退職しました。
勤続約38年。退職金は約2,000万円で、それまでの預貯金約500万円と合わせると、退職時点の金融資産は約2,500万円ありました。
妻の美紀さん(63歳)とは2人暮らし。住宅ローンは完済しており、子どもたちも独立しています。
「これだけあれば、しばらくは好きなことをしても大丈夫だろうと思ったんです」
昭夫さんは60歳で退職した際、会社から再雇用の話を持ちかけられました。しかし、長年仕事中心の生活を送ってきたこともあり、きっぱり断ったそうです。
退職後は妻と国内旅行に出かけたり、趣味のゴルフを楽しんだりしていました。
「平日に旅行できるのがうれしくてね。宿も安いし、混雑も少ない。最初のころは毎月のように出かけていました」
ただ、昭夫さんが退職した時点では、老齢年金の本格的な受給開始まで5年ありました。
妻の美紀さんはパート勤務で月約8万円を得ていましたが、夫婦の生活費は月約25万円。差額は貯蓄から補っていたといいます。
さらに退職後の2年間で旅行や趣味に約250万円を使い、自家用車の買い替えにも約250万円を支出しました。
「退職金が入ったばかりだったので、少しくらい使っても問題ないと思っていました」
ところが65歳を迎えた今年、預貯金を確認すると、残高は約800万円まで減っていました。退職時の2,500万円から、5年間で約1,700万円の減少です。
旅行や車の購入に加え、毎月の生活費の不足分、税金や社会保険料、住宅設備の修繕費などが重なっていました。
「減っているのは分かっていたんですが、ここまでとは思いませんでした」
そんなある日、昭夫さんは会社員時代の同期だった浩二さん(仮名・65歳)と食事をする機会がありました。
浩二さんも同じ会社で定年を迎え、退職金は約2,000万円。退職時の預貯金も昭夫さんと同じく約500万円だったそうです。
近況を話すうちに、退職後のお金の話題になりました。
「俺はもう、貯金が800万円くらいしかないんだよ」
昭夫さんがそう話すと、浩二さんは少し驚いた様子でした。
「そうなのか。うちはまだ2,300万円くらいあるよ」
その金額を聞き、昭夫さんは思わず聞き返しました。
「えっ、同じ退職金2,000万円だったよな? どうしてそんなに残ってるんだ?」
