「まだ住める家なのに」娘が反対した、築40年の実家の売却
70歳の隆志さん(仮名)と妻の明子さん(68歳)は、長年暮らしてきた4LDKの戸建てを昨年売却しました。
夫婦の年金は合わせて月約24万円。住宅ローンは10年以上前に完済しており、日々の生活に大きな不自由はありませんでした。
自宅を購入したのは、隆志さんが30歳のころ。子どもたちがのびのび暮らせるようにと、郊外に庭付きの一軒家を建てたのです。
当時は長男と長女の4人暮らしでしたが、子どもたちはすでに独立。現在はそれぞれ別の地域で家庭を持っています。
夫婦2人になってからも、しばらくは以前と変わらない生活を続けていました。しかし築40年が近づくにつれ、家のあちこちに不具合が出始めます。
数年前には給湯器を交換し、昨年は雨漏りの修理も必要になりました。さらに外壁と屋根の補修を業者に相談すると、約230万円の見積もりを提示されたそうです。
「家って、住んでいるだけでもお金がかかるんだなと思いましたよ。ローンが終わったら安心だと思っていたんですが」
隆志さんはそう振り返ります。
明子さんも、以前から家の管理に負担を感じていました。
2階にはかつての子ども部屋が2つありますが、今ではほとんど使っていません。それでも定期的な掃除や換気は必要です。
庭の草取りも、夏場は一日では終わらなくなっていました。
「昔は庭に花を植えるのが好きだったんです。でも最近は、草が伸びているのを見ると、また抜かなきゃと思ってしまって」
買い物にも車が欠かせません。最寄りのスーパーまでは車で15分ほど。隆志さんは運転を続けていますが、明子さんは数年前から長距離の運転を控えるようになっていました。
夫婦が住み替えを考え始めたのは、こうした負担が重なったためです。
ところが45歳の長女・真理さん(仮名)に相談すると、思いがけず反対されました。
「家を売るなんて、もったいないよ。ローンもないし、まだ住めるんでしょう?」
真理さんにとって、実家は子どものころからの思い出が詰まった場所です。自分の子どもたちを連れて帰省することもあり、庭でバーベキューをしたり、昔の自分の部屋に泊まったりしていました。
「私たちが帰る場所もなくなっちゃうじゃない」
