「捨てられなかったの」母が抱えていた事情と、親子の決断
健司さんが荷物を確認すると、同じような洗剤やタオルがいくつも見つかりました。
「これ、どうしてこんなに買ったの?」
「安かったから買っておこうと思って。前に買ったのを忘れて、また注文したこともあったのよ」
千鶴さんは買い物に出かける機会が減り、通販を利用することが増えていました。一方、届いた荷物を片付けるのが面倒になり、箱のまま置いておくことも多かったそうです。
さらに、亡くなった夫の衣類や昔の写真、子どもたちが使っていた家具なども処分できずにいました。
「捨てようとは思うんだけど、見るといろいろ思い出してしまってね」
健司さんは最初、不要なものを一気に処分しようと考えました。しかし、千鶴さんが大切にしているものまで勝手に捨てるわけにはいきません。
そこでまずは廊下や台所など、日常生活に必要な場所を優先して片付けることにしました。
翌週には妻にも手伝ってもらい、千鶴さんと相談しながら荷物を整理。通販の利用状況も確認し、同じものを何度も購入しないよう、注文した商品を記録することにしました。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、60歳以上の人が現在の住まいで感じている問題として、「住まいが古くなり、いたんでいる」が29.5%、「家賃、税金、住宅維持費など住宅に関する経済的負担が重い」が15.5%、「段差や階段等があり使いにくい」が12.7%。
高齢になるにつれて、住宅の維持管理や日常的な片付けが負担になる場合もあります。住み慣れた自宅であっても、以前と同じように管理し続けることが難しくなる可能性があるのです。
健司さんはその後、実家を訪ねる頻度を増やしました。母が希望したこともあり、地域包括支援センターにも相談し、生活上の困りごとについて助言を受けています。
「電話ではいつも元気そうだったので、こんなことになっているとは思いませんでした」
千鶴さんも、息子に助けを求めたことで少し気持ちが軽くなったようです。
「迷惑をかけたくなかったけど、一人じゃどうにもならなかったの。来てくれて助かったわ」
離れて暮らす高齢の親については、電話で元気な声を聞けることが安心材料になる一方、住まいの管理や家事の負担など、実際に訪ねなければ分からない変化もあります。
日常生活に支障が出る前に困りごとを把握するためにも、帰省時には部屋の様子や生活動線などを確認し、本人の意向を聞きながら必要な支援を考えていくことが大切でしょう。
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