「あと数年だけ働こう」65歳で再雇用を選んだ男性の計算
修一さん(69歳・仮名)は大学卒業後、製造業の会社に就職し、長年営業部門で働いてきました。60歳で定年を迎えた後も継続雇用され、65歳からは1年ごとの契約で勤務。69歳になるまで働き続けました。
現在受け取っている年金は月約14万円。妻の洋子さん(67歳・仮名)にも月約8万円の年金があり、夫婦の年金収入は合わせて月22万円ほどです。
住宅ローンは完済していますが、老後の生活費や住宅の修繕費などを考えると、修一さんには不安がありました。
65歳当時の再雇用後の給与は月約20万円。年金も受け取り始めていたため、収入面では比較的余裕があったといいます。
「妻には『もう十分働いたんじゃない?』と言われました。でも、毎月20万円の給料がなくなるのは、やっぱり不安でしたね」
修一さんには、退職後にやりたいことがありました。
若いころから旅行が好きで、妻とは「仕事を辞めたら北海道をゆっくり回ろう」と話していたそうです。また、学生時代の友人たちと再び集まり、趣味の登山を楽しみたいとも考えていました。
ところが、再雇用後も週5日の勤務が続きます。以前より責任は軽くなったものの、若手社員の相談に乗ったり、取引先への対応を任されたりすることもありました。
「会社から必要とされるのはうれしかったんです。慣れた仕事でしたし、もう1年くらいならいいかと思っていました」
契約更新の時期が来るたびに、修一さんは同じ判断を繰り返しました。洋子さんが「今年こそ旅行に行かない?」と誘っても、「退職してからゆっくり行こう」と返していたといいます。
そんな生活が変わったのは、68歳の秋でした。久しぶりに会った同級生から、登山仲間の1人が病気で長距離を歩けなくなったと聞いたのです。
「昔はみんなで山に登っていたんですが、その友人はもう難しいそうで。いつかまた行こうと思っていたのに、その機会がなくなってしまったんです」
修一さん自身も、以前より疲れやすくなったことを感じていました。
それでも契約期間の途中だったこともあり、69歳の誕生日を迎える年度末まで勤務を続け、ようやく退職します。
