「お金は増えたけれど…」退職後に気づいた4年間の重み
退職して間もないころ、修一さんは洋子さんに旅行の話を持ちかけました。
「今度こそ北海道に行こうか。2週間くらいかけて回るのもいいな」
ところが、洋子さんの反応は以前ほど積極的ではありませんでした。
「行きたいけど、最近は長い移動が疲れるのよ。まずは近場からにしない?」
洋子さんは数年前から膝に痛みを感じることがあり、長時間歩く旅行に不安を覚えるようになっていたのです。修一さんはそのとき初めて、妻の体調が少しずつ変わっていたことを実感したといいます。
「自分は仕事に行っていたから、妻が普段どれくらい疲れるようになったのか、あまり分かっていませんでした」
再雇用の4年間で得た給与収入は、額面で約960万円。もちろん税金や社会保険料が引かれ、生活費にも使っていたため、全額が貯蓄として残ったわけではありません。
それでも、働き続けたことで家計に余裕ができたのは確かです。
「お金の面では助かりました。ただ、65歳で辞めておけばよかったのかと考えることもあります。妻も私も、あのころのほうが元気でしたから」
総務省統計局『労働力調査(2025年平均)』によると、65~69歳の就業率は54.9%です。この年代では、働き続けることも一般的な選択肢となっています。
修一さんは、再雇用を選んだこと自体が間違いだったとは考えていません。仕事を通じて人とのつながりを保てたことや、収入面で安心できたことには感謝しています。
ただ、退職後にやりたかったことを、すべて退職後まで待つ必要はなかったと感じているそうです。
現在は妻と相談し、体に負担の少ない旅行を少しずつ計画しています。友人たちとも、登山ではなく食事会で集まるようになりました。
「働いている間にも、旅行くらい行けたはずなんです。『辞めたら時間ができる』と思って、何でも先延ばしにしていたんですよね」
高齢期に働き続けることには、収入の確保や社会とのつながりを維持できる利点があります。一方、年齢を重ねるにつれて体力や家族の状況が変化し、以前と同じ活動が難しくなることもあります。
何歳まで働くかを考える際には、必要な収入や貯蓄の見通しとともに、今のうちに実現したいことにも目を向けたいところです。仕事を続ける場合でも、休暇や勤務日数を調整しながら、家族や自分のための時間を確保することが、将来の後悔を減らす一つの方法になるでしょう。
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