「薄情な娘でいいよ」54歳女性が実家を出る決断をした理由
「母のことは心配でした。でも、このままだと、自分の生活がなくなってしまうと思ったんです」
理恵さんが選んだのは、実家から電車で30分ほどの場所にある賃貸マンションでした。
家賃は月9万円。管理費を含めると月9万5,000円ほどかかります。
月収40万円の理恵さんにとっても、決して小さな負担ではありません。それでも、一人で過ごせる時間と空間を持ちたいという気持ちが強かったそうです。
引っ越しを決めたことを母親に伝えると、文子さんは驚きました。
「この歳になって、一人で暮らせっていうの?」
理恵さんは、母親を見捨てるつもりはないこと、これからも必要なときには手伝うことを説明しました。
しかし文子さんは納得せず、「薄情な娘だね」と言ったそうです。
「薄情な娘でいいよ。でも、私はもう家を出るから」
理恵さんは、そう答えました。
厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、介護を必要とする人の主な介護者のうち、同居している人は45.9%でした。また、主な介護者が同居している場合、女性が68.9%を占めています。親の介護や生活支援を家族が担う場面では、同居する女性の負担も課題となっています。
理恵さんは引っ越しに先立ち、母親と一緒に家計や日常生活を確認しました。
文子さんの年金は月13万円で、税金や社会保険料を差し引いた手取りは月11万円台。持ち家のため家賃はかかりませんが、食費や光熱費、固定資産税などの負担があります。
それでも預貯金が約900万円あり、普段の生活費を見直せば、当面は一人暮らしを続けられる見込みでした。
理恵さんは、母親が重い買い物をしなくて済むよう、食材の宅配サービスを申し込みました。通院についても、必要に応じてタクシーを利用できるようにしています。
また、今後生活に不安が出てきた場合は、地域包括支援センターに相談することも確認しました。
引っ越しから3ヵ月。理恵さんは週に一度、母親に電話をかけ、月に2回ほど実家を訪れています。
「最初は母も怒っていましたが、最近は自分で食事を作ったり、近所の友人と出かけたりしているようです」
理恵さん自身も、仕事帰りに好きな店で食事をしたり、休日にゆっくり過ごしたりする時間が増えました。
「今は母に会いに行くのも、それほど負担に感じなくなりました。以前は、家に帰ること自体が憂うつだったので」
親が高齢になると、子どもが日常生活を支える機会は増えていきます。しかし、仕事や自身の暮らしを抱えながら、すべてを担い続けることは難しい場合もあるでしょう。親の生活状況や利用できる支援を確認し、家族が無理なく関われる方法を考えることが、長く関係を保つうえで重要になります。
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