10年後の「うっかり」は、どうすれば回避できたのか
この相続時精算課税制度には、次のような特徴・傾向があります。
・最後にやるべきこと(=相続財産への足し戻し):忘れられる
この「最後にやるべきこと」が忘れられてしまう主な原因は次の2つです。
1. 贈与から相続までの「時間差」で忘れる
贈与実行から相続発生まで長い年月が経ってしまうことが多くあります。
2. あげる側ともらう側の「温度差」で忘れる
手続の主役が父母(祖父母)になりがちなので、子(孫)に制度の意味が十分に共有されにくいケースがあります。
では、どうすれば10年後に生前贈与分の金額を足し忘れる「うっかり」を防止できるのでしょうか。主な対策は次の2つです。
【1. 時間差への対策】記憶だけに頼らない
口頭で言い伝えるだけで100%、覚えておいてもらうのは非現実的です。今回のような生前贈与の手続記録は、あえて紙に印刷して家族が見つけやすいようにしておく、カレンダーアプリや手帳に記録するなどの工夫が役にたちます。
【2. 温度差への対策】「自分ごと」にしてもらう
相続時精算課制度は、税務署に届出をして初めて利用できる生前贈与の制度です。例えば戸籍等の取り寄せや専門家相談への同席など、できる範囲で子・孫自身にも関わってもらうことが一つの工夫です。
税務署は「前もって」知らせてくれないのか
相続時精算課税制度を利用する贈与の場合、あらかじめ税務署に届出・手続をしています。つまり、最後にやるべきこと(=相続財産への足し戻し)を一番よく把握しているのは、実は税務署側なのです。
だったら、父母や祖父母が亡くなったタイミングで税務署の方から「お知らせ」を送ってくれればいいのにと思いますよね。
2023年5月から「相続時精算課税制度により贈与された財産がある」という通知文書の送付が東京国税局の管轄区域に限って行われているようですが、あくまで過去の記録に基づいて把握できる範囲での試行的な送付のようです。
そのため、原則として「税務署からの親切なリマインドはない」と考えておくべきなのですが、ここ最近で大きく便利になった点があります。
2026年9月の国税庁のシステム刷新に伴い、e-TAXの「マイページ」にアクセスすれば、自分自身の「相続時精算課税の適用状況」がWeb上で確認できるようになったのです
一方で「忘れていました」という言い訳が今後は通用しにくくなる側面もありますので、便利なシステムは活用しつつ、親子間で生前贈与の記録をしっかりと引き継いでいくことがますます大切になってくると言えます。
永岡 玲子
税理士法人シエル
代表税理士
