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共有スペースに引かれた「境界線」と孤立
アレルギー発覚の翌日、決定的な出来事が起きます。
敬三さんが様子を見ようと2階の子世代エリアへ続く階段を上った際、美咲さんが冷ややかな視線を向け、2階の床にビニールテープを貼りました。
「お義父さん、この線から入ってこないでください。命にかかわる約束を守れないなら、これからは私たちだけで子育てします」
敬三さんは戸惑い、健太さんに相談しました。しかし健太さんは「今まで隠れて食べさせていたなんて信じられない。これ以上美咲を怒らせないでくれ」と憤りを隠しません。
実際、二世帯同居においてこうした生活習慣や価値観の摩擦が生じるケースは少なくありません。
株式会社LIXIL住宅研究所が実施した『二世帯住宅に関する調査』によると、親と同居している方の同居満足度は80.2%と全体として非常に高い数値を示しています。しかしその一方で、二世帯住宅に関する不安や懸念点として、同居世帯・別居世帯の双方で最も高かったのが「生活リズムなどの違い」(同居世帯:23.4%、別居世帯:39.4%)でした。
さらに、同居世帯では「知人を家に呼びづらい」(21.8%)や「教育方針への干渉」(18.8%)といったプライバシーや育児に関する懸念も上位に挙げられています。高い満足度の裏で、生活リズムや育児方針のズレが家族間の深刻な摩擦へと発展してしまうリスクが示されています。
「二世帯住宅とはいえ、この家を建てる費用はすべて私たちが出しました。それなのに『この線から入ってくるな』って。あんまりです」
もちろん、別の住居へ引っ越す金銭的ゆとりはありません。そもそも自分たちの家ですから、出ていく必要もありません。だからといって、健太さんたちに「出ていけ!」というのも筋違い。今のところ、自宅内で肩身の狭い生活を強いられています。
二世帯同居を計画する際、親世代が退職金などの財産を投げ打つ行為は少々危険。どれほど家族関係が良好であっても、価値観の違いによる衝突は予期せぬタイミングで起こり得るものです。
万が一別居を選ぶことになった際、新たな住居や高齢者施設を確保できるよう、自身の生活を守るための金融資産を必ず手元に残しておくことが不可欠です。
[参考資料]