73歳で月16万円の年金収入がありながら、5人の孫へのお小遣いのために働き続ける姿があります。高齢期において「孫への支援」や「働くこと」が大きな生きがいとなる一方、健康面や負担感とのバランスに悩むケースは少なくありません。高齢期の就労と家族支援のリアルな実態から、自分らしく無理のない老後の過ごし方や家族との関係性について考えていきます。
「孫のためなら、まだ働ける」〈年金月16万円・73歳祖父〉5人の孫に〈月2万円のお小遣い〉をやめられず…娘が困惑した「老後の働き方」の現実 ※写真はイメージです/PIXTA

73歳でも週3日の仕事

「もう、仕事を辞めてもいいんじゃない?」

 

娘からそう言われても、斎藤徹さん(仮名・73歳)は首を縦に振りません。

 

妻は5年前に亡くなり、現在は東京都内のマンションで一人暮らし。年金は月18万円、手取りにすると月16万円ほどです。住宅ローンはすでに完済しています。食費や水道光熱費、通信費、管理費、医療費などを合わせた生活費は月13万円ほどで、年金だけでも十分に暮らしていけます。

 

それでも、徹さんは週3日、午前8時から午後5時までマンション管理の仕事を続けています。月の給与は約12万円です。

 

仕事を始めたのは、65歳で定年退職した翌年。当初は「少しでも貯金を増やしておきたい」という気持ちがありました。亡くなった妻の治療費を稼ぐ……という事情もありましたが、いま働き続ける理由は別のところにあります。5人の孫の存在です。

 

長男の大輔さんに2人、長女の彩さんには3人の子ども、つまり徹さんには計5人のかわいい孫がいます。それぞれの孫に月2万円ずつ、合計で毎月10万円(年間120万円)を“お小遣い”名目で渡しているのです。

 

最初のきっかけは、彩さんのちょっとした愚痴でした。

 

「サッカーもやりたいって言い出して。でも体操もピアノも続けたいというし……子どものやる気には応えたいけど、お金がいくらあっても足りないわ」

 

当時6歳、現在10歳になる初孫のことでした。「ここは私の出番」と思ったという徹さん。

 

「私が援助してやる。だから孫のやる気を大切にしなさい」

 

そう言って、月2万円を援助するようになりました。さらに「1人だけというのは不公平」と、徹さん自ら「孫一人当たり月2万円のお小遣い」と称し、大輔さん、彩さんにお金を渡すようになったのです。

 

総務省『労働力調査(基本集計)』によると、2024年の65歳以上の就業率は25.7%。「65〜69歳」で53.6%、「70〜75歳」で35.1%、「75歳以上」で12.0%となっています。徹さんと同年代でも3人に1人は働いています。70代でも働くことは、いまや珍しいことではありません。