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知識なき投資の代償と残された現実
「……ないんだ。退職金は、もうほとんど残ってない」
健一さんは、智子さんに内緒で退職金2,400万円のうち半額を、海外のFX(外国為替証拠金取引)と新興国株式につぎ込んでしまったというのです。
健一さんは再雇用で給料が下がることに納得がいっておらず、「その分、投資でカバーしてやる」と考えたそうです。しかし、投資知識がほとんどない健一さんが選んだのは、ハイリスク・ハイリターンのレバレッジ取引。相場の急変動に対応できず、ロスカット(強制決済)の憂き目に遭い、あっという間に損失は1,000万円を超えました。すべて無知が生んだ自己責任による大損です。
「俺だって焦っていたんだよ!」
自分の過ちを棚に上げ、逆ギレする夫の身勝手な言葉に、智子さんは開いた口が塞がらなかったといいます。健一さんの告白以降、家計の状況は一変します。65歳時点で目指していた貯蓄額は、退職金を含めて3,000万円。現在、その半分にも達していません。
“退職金でちょっとご褒美”は当然中止。質素倹約を心掛け、家計管理はすべて智子さんが担当することに。健一さんが自由に使えるお金は1円もなくなりました。
「年金がもらえるようになるまで真面目に働きます……」
意気消沈の様子で、再雇用の日々を過ごしているといいます。
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025(二人以上世帯)』によると、世帯主が60代の世帯が「年金支給時に最低準備しておくべき」と考える金融資産残高は平均2,315万円(50代では2,459万円)にのぼります。一方、老後の生活について「心配である」と回答した割合は50代で84.0%、60代で74.0%と非常に高い水準です。
また、「金融リテラシー調査2025」によれば、株式や投資信託等の購入経験者のうち約3割が商品性を十分に理解しないまま購入しており、健一さんのように焦りから知識不足のままハイリスク取引に手を出す行為は老後破綻のリスクを跳ね上げます。定年後は見栄や一攫千金を狙う投資を避け、夫婦で現実的な資金計画を共有し、地道に家計管理をすることが重要です。