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母「もう出せない」と伝えたが…
ある日、美智子さんが腰を痛め、病院で検査を受けた際、医師から治療の継続を勧められました。しかし、費用を気にして通院回数を減らそうとしたのです。
その様子を見た近所の友人が、「息子さんは働いているのだから、もう少し自分のことを優先してもいいのでは」と言ったそうです。その言葉で初めて、美智子さんは自分の生活が限界に近づいていることを認識しました。
「ごめんね。来月から5万円は渡せないかもしれない」
意を決して伝えた美智子さん。すると健一さんは、しばらく黙ったあと、こう言い放ったといいます。
「何をいまさら。親なら最後まで面倒見るものでしょ」
その言葉を聞いた瞬間、美智子さんは返す言葉がありませんでした。50代になろうとしているのに、何を言っているんだ――怒りよりも、長年抱えてきた不安が一気に押し寄せたといいます。
その後、健一さんとの話し合いを重ねました。家に住み続けるなら、最低でも月3万円の生活費を入れること。自分の携帯電話代や保険料などは自分で払うこと。家族だから支え合うことと、一方的に依存することは違うこと――何度も何度も伝えました。
健一さんは納得しませんでしたが、現在は月2万円を家計に入れるようになりました。ただし、問題がすべて解決したわけではありません。
48歳という年齢を考えれば、今後の収入や老後資金への不安は残ります。美智子さん自身も、今後は介護が必要になったときのことなど、考えなければなりません。もし施設に入るようなことになったら、この家は売却するのが現実的。しかし、そうなったら、健一さんは住まいを失います。
「もっと早く線引きすればよかったと思います。でも、親にとって子どもは何歳になっても心配な存在だから……」
厚生労働省『2024年 国民生活基礎調査の概況』によると、65歳以上の者がいる世帯のうち、美智子さんのような「親と未婚の子のみの世帯」は561万9,000世帯、全体の20.4%を占めています。こうした閉ざされた家庭環境で生活困窮や過度な依存関係が深刻化すると、最悪の場合、虐待へ発展するリスクも。
実際、厚生労働省『令和6年度 高齢者虐待防止・支援等に関する調査』では、養護者による虐待の加害者は「息子」が38.9%と最も高い割合となっています。親子間だけで問題を抱え込まず、生活や就労、今後の介護について早期に専門機関へ相談することが、問題解決に向けた重要な一歩になります。