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急変したお盆の食卓
それまでお盆のたびに、大金を使っていました。食材だけで5万円。寿司や仕出し料理で4万~5万円。貸し布団だけで10万円近くかかります。そして孫へのお小遣いなども合わせると、30万円近くに。毎月貯蓄に回していた余裕分が、すべて吹っ飛びます。それでも1年に1回の楽しみ。高い出費とは思いませんでした。
いろいろ手配していましたが、キャンセル料がかからないタイミングだったので、結局、その年の出費はゼロ円。家計的には助かりました。ただ心にはポッカリと穴が開いたように感じました。
迎えたお盆。朝から仏壇に手を合わせ、墓参りを済ませると、正夫さん夫婦は近所のスーパーへ向かいました。
例年ならカートいっぱいに肉や飲み物、お菓子を積み込みます。しかし、この日は夫婦2人分の刺身と総菜、それに小さな果物を買っただけでした。会計は4,200円。
「ずいぶん安く済んだね」
美和さんが笑って言いました。正夫さんは「そうだな」と返しましたが、そのあとに言葉が続きません。昼になっても玄関のチャイムは鳴らず、庭を走り回る孫の姿もありません。食卓には夫婦2人だけが向かい合い、テレビから流れる帰省ラッシュのニュースだけが、例年との違いを際立たせていました。
どこか寂しさを感じるなか、スマートフォンが鳴ります。長男一家が少年野球の大会で撮った集合写真を送ってくれました。長女からは、夏期講習へ向かう子どもの写真が届きました。次男夫婦からは義実家で撮った海の景色が送られてきました。どのメッセージにも、「来年は帰れたら帰るね」「体に気を付けて」という一文が添えられています。
内閣府『第10回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査』によると、日本の高齢者が生きがいを感じる時として「子や孫など家族との団らん」を挙げた割合は53.1%で最も高くなっています。しかし、別居している子どもとの実際の接触頻度は低く、「月に1~2回」が24.4%、「年に数回」が18.0%にとどまります。
さらに、日本には「親しい友人はいない」と答えた人が37.9%に上ります。家族以外のつながりも薄いなか、唯一の生きがいともいえる家族との交流が減ることは、老後の寂しさや孤立を深める契機になりえます。