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今度のお盆だけど…帰れない
地方都市の郊外で、妻の美和さん(66歳・仮名)と暮らす佐藤正夫さん(68歳・仮名)。60歳定年以降も再雇用で働き、年金受給が始まる65歳で完全引退。現在は、正夫さんの年金月16万円と、美和さんの年金月8万円が生活のベースになっています。
月々の生活費は、平均して18万円前後。毎月2万~3万円は預貯金に回すことができました。退職金を含めた貯蓄は2,000万円近くあり、経済的不安はほぼありません。買い物や旅行など、お金のかかる趣味もなく、自然と質素倹約な生活を送っていたといいます。
そんな2人にとって、毎年、お盆が最大の楽しみでした。東京に住む長男家族5人、長女家族4人、次男家族4人。佐藤さん夫婦も合わせると、総勢15人が一堂に会します。料理が並ぶリビングには笑い声が響き、大きなビニールプールを2つ出した庭では孫たちが水鉄砲で遊ぶ。夜にはみんなで花火を楽しみます。そんな光景を見て幸せに浸るのが、退職後の何よりの楽しみでした。
その年も7月に入ると、美和さんは少しずつ準備を始めていました。客用布団を干し、食器を買い足し、冷凍庫をいろいろなアイスでいっぱいにします。
「今年はスイカを大きいのにしようか」
そんな会話を交わしていた矢先、長男から「今年は部活の大会があるから帰れない」とLINEが届きました。仕方がありません。そう思いました。
ところが、その2日後には長女からも「子どもの塾の夏期講習があって難しいかな」と連絡が入ります。
さらに次男からも、「妻の実家に行く予定が入って……今年はごめん」と短いメッセージが届きました。
気づけば、誰も帰ってこないことになっていました。
「来たくないなら来なければいい」
正夫さんは強がって言いました。知識として「今年だけだろう」と自分に言い聞かせていました。しかし、美和さんは「小学校も高学年になったり、中学生になったりすると、家族の予定を優先させるわけにはいかなくなるから。もう、みんなが集まることは難しいかもしれないね」とポツリ。
国立社会保障・人口問題研究所『第9回世帯動態調査(2024年)』によると、子どもが全員離家して夫婦のみになる「エンプティ・ネスト(空の巣)」期にある親の割合は、50代後半で約4割に達し、60代前半では50%を超えています。また、18歳以上の子どもとの同居割合は年齢とともに低下し、70~74歳の女性では37.8%と、70代から80代前半にかけて最も低くなります。子どもたちが成長し、それぞれの学業や生活を優先して親元から離れていく変化は、誰もが通る、一般的なライフコースの姿といえるでしょう。