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「親不孝者」と責められた日
その年のお盆の親族の集まり。昼食を終えたあと、真由美さんは静かに切り出しました。
「実家を処分して、お墓も永代供養へ移そうと思っています」
その場の空気が一瞬で変わりました。最初に口を開いたのは、70代の伯父でした。
「墓じまいなんて、馬鹿げたこと言うな!」
別の親戚も続きます。
「ご先祖様を捨てるのか」
「親が泣いているぞ」
「ひとり娘なんだから最後まで守るのが当たり前だ」
矢継ぎ早に言葉が飛んできます。真由美さんは事情を説明しました。
「私も60歳が近いんです。東京で生活があります。家も空き家のまま維持できません」
しかし誰も聞こうとせず、約30分間、一方的な非難が続きました。「では誰か管理を引き継いでくれませんか」と口にすると、部屋は静まり返ります。誰一人として「自分がやる」とは言いませんでした。
「涙が出そうでした。でも、その場では我慢しました」
真由美さんはその後、自治体や石材店、寺院に相談し、親族にも改めて資料を示しました。墓じまいにかかる費用、永代供養の内容、管理できる人がいなくなる将来について、一つずつ説明しました。時間はかかりましたが、一部の親族は理解を示すようになりました。一方で、最後まで反対する親族もいます。
「今でも伯父とは気まずいままです。でも、私が80歳になっても、あの家と墓を守れるとは思えません」
そう話す真由美さんの決断は、「誰も管理できなくなった後」の現実を考えた末の選択でした。
総務省の『令和7年国勢調査』によると、2025年の日本の人口は1億2,304万9,524人となり、前回(2020年)調査から309万6,575人(2.45%)減少しました。世帯数は5,712万4,507世帯と2.31%増加したものの、1世帯当たりの人員は「2.15人」にまで減少し、すべての都道府県で家族の小規模化が進んでいます。
この「人口減少」と「単身・小規模世帯化」の進行は、実家や先祖代々の墓を継承・管理する身近な担い手が失われる厳しい現実を浮き彫りにしています。真由美さんのように、子がおらず将来の管理難を見据えて墓じまいや実家処分を選択するケースは、激変する国内の世帯構造に適応するための現実的、かつ合理的な決断といえるでしょう。