実家の維持や墓継承問題に悩む人が増えています。年間維持費や高額な修繕費、そして将来の管理難――葛藤の末に「墓じまいや売却」を決断することも珍しくないでしょう。ある女性の事例から、少子高齢化が進む現代、避けては通れない「実家と墓」の在り方について考えていきます。
「墓じまいなんて、馬鹿げたこと言うな!」月収手取り28万円・58歳ひとり娘、お盆の実家帰省で「親戚から袋叩き」に悔し涙 ※写真はイメージです/PIXTA

誰も住んでいない実家に、いくら払っているのか?

東京都内で暮らす会社員の佐伯真由美さん(58歳・仮名)。お盆になると毎年、片道約3時間半かけて東北地方の実家へ帰省していました。

 

両親はすでに他界。実家は築52年の木造住宅です。誰も住んでおらず、固定資産税は年間約7万円。庭木の剪定や草刈りを地元業者へ依頼すると年間12万円ほどかかります。

 

さらに、先祖代々の墓があります。墓地の管理料は年間1万5,000円。帰省するたびに墓掃除を行い、お彼岸や法事のたびにも交通費がかかります。

 

共働きである真由美さんの給与は手取りで28万円ほど。すでに定年を迎え再雇用で働く61歳の夫の給与は、真由美さんを下回るそうです。住宅ローンは完済したものの、ふたりの老後を見据えると、もう少し資産形成を加速させたいところだといいます。

 

「親が元気だった頃は帰省も楽しみでした。でも今は、家と墓の管理だけのために帰るようなものです」

 

親が亡くなり誰も住まなくなった実家は、経年劣化もあり、最近は雨漏りも。屋根の補修だけでも70万円以上かかるとのこと。さらにシロアリ被害も発覚し、対策に180万円がかかるといいます。

 

「このまま維持する意味があるのだろうか」

 

そんな思いは年々強くなっていきました。

 

墓も同じでした。夫婦に子どもはいません。自分が高齢になれば、誰も墓を守る人はいなくなります。そこで真由美さんは、実家を売却し、遺骨は永代供養墓へ改葬する、いわゆる「墓じまい」を決断しました。

 

実家や土地の維持管理に頭を悩ませる真由美さんのようなケースは、決して他人事ではありません。国土交通省『令和8年度土地白書』によると、自身や家族が所有している「日常的に利用されていない土地」について、「管理が行き届いていない」と回答した割合は41.8%に上っています。これは「管理は行き届いている」(41.5%)という回答を上回る結果です。

 

遠方にある実家の草刈りや建物の老朽化対策、さらにはシロアリ被害といった高額な維持・修繕コストは、個人の家計に重くのしかかります。実家を空き家のまま放置するリスクを避けるため、真由美さんのように「売却や処分」という現実的な選択を迫られる世帯は、今後さらに増加していくと考えられます。