厚生労働省『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上の者がいる世帯は全世帯の約半数を占め、高齢者のみならず家族全体の生活基盤が課題となっています。親の年金に依存する中高年の子どもの問題も深刻化しています。ある親子の事例を通して、その実態をみていきます。
「もう、お母さんには頼らないから」実家に居座る52歳無職の息子から届いたLINEに胸騒ぎ。75歳母が自宅で見た「信じられない光景」 (※写真はイメージです/PIXTA)

届いたLINEの裏側

LINEを受け取った翌日、和子さんは急いで自宅へ戻りました。その日は病院へ行く予定で外出していました。

 

玄関を開けると、いつもと違う様子に気づきました。リビングの机の上に、見慣れない書類が置かれていました。不動産会社の封筒でした。中には、自宅の売却査定に関する書類が入っていました。

 

さらに、息子の部屋からは金融機関への相談資料も見つかりました。内容を確認すると、実家を利用した資金調達について調べていたことが分かりました。

 

自宅の土地と建物の評価額は約1,800万円。隆志さんは、その資産をもとに借入や売却を検討していたようでした。もちろん、和子さんには何も説明がありません。

 

「私の家なのに、私に何の相談もなかったんです」

 

所有者は和子さんです。しかし、息子は長年住んでいる実家を、自分の資産のように扱っていました。和子さんが問いただすと、隆志さんはこう話しました。

 

「この家を持っていても意味がないだろ。売れば生活を立て直せる」

「俺だって、このまま親に頼る生活はしたくないんだ」

 

隆志さんが考えていたのは、家を売却して得た資金で生活を立て直すことでした。しかし、そこには母親の老後資金や住まいの問題が含まれていました。和子さんは、自宅を手放すつもりはありませんでした。

 

「ここを売ったら、私はどこで暮らせばいいの」

 

そう聞くと、隆志さんは黙ったままでした。現在、和子さんは一人で今後を考えています。

 

息子との同居を続けるのか。別居を求めるのか――。

 

簡単な答えは出ていません。弁護士への相談も検討していますが、その費用も気になります。年金月15万円の生活では、大きな出費は負担になります。

 

和子さんのように、親が高齢になっても子どもの生活を支え続ける家庭では、金銭面だけでなく、住まいや財産管理の問題も発生します。

 

「息子が苦しんでいるなら助けたいと思っていた。裏切られた気持ちでいっぱいです」