(※写真はイメージです/PIXTA)
「いつか働く」息子を支え続けた75歳母
「もう、お母さんには頼らないから」
そのLINEが届いたのは、平日の午後でした。75歳の佐藤和子さん(仮名)は、スマートフォンの画面を何度も確認しました。52歳になる一人息子の隆志さん(仮名)からの、突然の言葉でした。驚きより先に、和子さんの胸に浮かんだのは安心ではありませんでした。
「なぜ今、こんなことを言うのか。嫌な予感がしました」
和子さんは、地方都市にある築38年の一戸建てで隆志さんと2人で暮らしています。夫は10年前に亡くなり、現在の収入は、月約15万円の年金のみ。そこから固定資産税、光熱費、食費、医療費を支払っています。住宅ローンはすでに完済していますが、築年数が経過しているため、屋根や給湯器の修繕費も必要になります。
一方、隆志さんは長年、安定した仕事に就いていませんでした。20代、30代のころは会社員として働いていましたが、40代半ばで退職。その後、アルバイトを転々としましたが、現在は無職です。和子さんは何度も「働いてほしい」と伝えました。それでも、息子はこう答えていました。
「今は仕事を選んでいるだけ。ちゃんとした仕事が見つかったら出ていく」
その言葉を信じ続けました。毎月15万円の年金から、食費や生活費として隆志さんの分も負担してきました。息子から生活費として渡されるお金は、ほとんどありませんでした。それでも和子さんは責めきれませんでした。
「親が困っている子どもを見捨てることなんてできませんでした」
高齢の親が抱える家族問題
厚生労働省『令和8年版高齢社会白書』では、65歳以上の者がいる世帯が増加し、高齢者の生活を支える家族関係も変化しています。かつては親が子を支え、子が老後の親を支えるという形が一般的でした。しかし現在では、親が高齢になっても、成人した子どもの生活費を支え続けるケースがあります。
和子さんの家庭も、その一つでした。年金15万円のうち、毎月の生活費は約13万円。残る2万円程度を貯蓄に回していました。預貯金は約700万円ほど。ただし、そのお金は老後の医療費や介護費用のために残しているものでした。
「息子が立ち直るまで」
そう考えていた支援が、いつ終わるのか分からない状態になっていました。