総務省『令和7年通信利用動向調査』によると、テレワークを導入している企業の割合は近年変化しており、働き方の選択肢にも揺れが生じています。地方移住への関心が高まる一方、仕事や教育環境の格差という新たな課題も浮上しています。そんな社会課題に直面している一つの事例を通して、その実態をみていきます。
「“子どものため”は間違いでした…」世帯年収1,000万円・40代夫婦。地方移住して5年、夜の居間で吐露した「痛烈な後悔」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「自然の中で育てたい」夫婦が選んだ移住先

5年前、東京都内から長野県内の地方都市へ移住した山本健司さん(47歳・仮名)と妻の山本美咲さん(45歳・仮名)。

 

当時、夫婦には小学3年生の長男と、幼稚園に通う長女がいました。

 

健司さんは都内のIT企業に勤務。年収は約750万円。美咲さんも事務職で年収が約350万円あり、世帯年収は約1,100万円でした。

 

生活に大きな不満があったわけではありません。ただ、夫婦には以前から考えていたことがありました。

 

「子どもを満員電車と競争ばかりの環境で育てていいのか」

 

そう考えたことが、移住を決断するきっかけになりました。購入したのは、築15年の戸建て。土地と建物を合わせた価格は3,200万円。頭金500万円を入れました。

 

都内で同程度の広さの住宅を購入する場合と比べれば、負担は大きく抑えられます。

 

毎月の住宅ローン返済額は約8万5,000円。固定資産税は年間約12万円。都市部では難しかった広い庭もあり、子どもが走り回れる環境を手に入れました。

 

移住直後、夫婦は満足していました。

 

「ここなら子どもたちも自分らしく育つと思っていました」

 

美咲さんはそう振り返ります。しかし、5年が経過した現在、夫婦の生活には別の問題が出ていました。

 

移住時、健司さんの会社ではリモートワークが定着していました。週5日の出社は必要なく、月に1〜2回、東京の本社へ行けば業務を続けられる状態でした。

 

「これなら地方でも働ける。そう思ったから移住を決めました」

 

ところが、その後、会社の方針が変わりました。出社日数が増え、現在は週3日以上、月の6割以上の出社が義務付けられています。

 

自宅から最寄り駅まで車で25分。新幹線と在来線を乗り継ぎ、東京のオフィスまで片道約2時間半かかります。交通費の一部は会社負担ですが、移動時間は増えました。

 

朝5時台に起きる日もあります。帰宅は午後10時を過ぎることが増えました。

 

「移住した時は、仕事を続けながら子どもとの時間も増えると思っていました。でも今は、東京勤務のころより疲れています」

 

健司さんの月収は手取りで約45万円。住宅ローンや車の維持費、教育費を払うと、毎月自由に使えるお金は多くありません。

 

車は夫婦で2台所有しています。地方では車が生活の足になるためです。自動車ローンは残り約180万円。ガソリン代や保険、車検費用を含めると、年間約70万円を車関連費に使っています。移住前には想定していなかった支出でした。