総務省『令和7年通信利用動向調査』によると、テレワークを導入している企業の割合は近年変化しており、働き方の選択肢にも揺れが生じています。地方移住への関心が高まる一方、仕事や教育環境の格差という新たな課題も浮上しています。そんな社会課題に直面している一つの事例を通して、その実態をみていきます。
「“子どものため”は間違いでした…」世帯年収1,000万円・40代夫婦。地方移住して5年、夜の居間で吐露した「痛烈な後悔」 (※写真はイメージです/PIXTA)

教育環境への不安

さらに夫婦を悩ませているのが、子どもの教育環境です。長男の高校進学を考える時期が近づき、問題が具体化しました。

 

近隣には高校や大学進学向けの学習塾が少なく、専門的な指導を受けるには隣の市まで通う必要があります。オンライン塾も試したものの、長男には合わなかったといいます。

 

長男は現在、中学1年生。数学が得意で、将来は理系分野への進学も考えています。週末に車で片道40分かけて通うのは個別指導塾。月謝は月約3万5,000円。送迎時間も含めると、夫婦の負担は小さくありません。

 

「自然が豊かというのは、小学生までですね。今後のことを考えると、子どものためにも東京のほうがよかったなと……」

 

美咲さんは話します。

 

総務省『令和7年通信利用動向調査』によると、企業のテレワーク導入率は50.1%(前年比2.8ポイント増)。前年から微増しましたが、コロナ禍のピーク時と比べると減少しました。昨今は出社に舵を切る企業も珍しくありません。働く場所の自由度が高まった一方で、企業側の方針によって働き方が再び変わるケースもあるのです。

 

山本さん夫妻が直面した問題は、まさにこの変化でした。移住当時は「場所に縛られない働き方」が前提でした。しかし、その前提が崩れたことで、地方に住み続けるための条件も変わりました。

夜のリビングで出た本音

現在、山本家の家計は大きく赤字ではありません。

 

夫婦の手取り収入は月約55万円。住宅ローン8万5,000円、食費8万円、水道光熱費3万5,000円、通信費2万円、車関連費約6万円、教育費約5万円。そのほか保険や固定費を含めると、毎月の支出は約45万円前後になります。貯蓄は約900万円あります。

 

ただし、長男の高校、大学進学を考えると安心できる状況ではありません。私立大学に進学した場合、学費や仕送りで数百万円単位の負担になる可能性があります。

 

移住前に想定していた「子どものため」という目的が、現在は夫婦の不安につながっています。

 

ある夜、2人はリビングで今後について話しました。

 

「俺たちは間違えたのかな。子どものためって言いながら、自分たちが納得したかっただけだったのかもしれない」

「都会に残っていたら、別の後悔をしていたと思う。でも、今の状況も簡単じゃない」

 

移住そのものを後悔しているわけではありません。子どもたちは自然の多い環境で育ち、近所との関係もできました。

 

一方で、仕事、教育、交通という生活の基盤について、都市部とは違う負担があることも事実です。現在、長男の高校進学を前に、家族で都市部への再移住も選択肢として話し合っています。

 

「家を買ったから、もう戻れないと思っていましたが、もう少し柔軟に考えてみようと思っています」