厚生労働省『国民生活基礎調査』によると、要介護者等と同居している主な介護者のうち、男性の75.0%、女性の76.5%が60歳以上であり、いわゆる「老老介護」のケースが相当数存在していることが分かっています。介護保険制度の枠組みだけでは支えきれない、現代特有の「介護格差」が深刻化しています。そんな社会課題に直面している一つの事例を通して、その実態をみていきます。
親の介護「月35万円でプロに任せる人」と「任せられない人」の残酷な格差 (※写真はイメージです/PIXTA)

自分が面倒を見れば介護費用は浮くという目論見

都内の一戸建てに住む加藤和夫さん(65歳・仮名)は、半年前から実家で暮らす88歳の母親の介護を一人で担っています。加藤さんは4年前に定年退職し、現在は月額17万円の年金と、現役時代に蓄えた1,500万円の貯蓄を取り崩しながら生活しています。当初は「自分が面倒を見れば介護費用は浮く」と考えていました。

 

「お金もなかったし、親を施設に入れることにも抵抗があった。自分には選択肢がなかった」

 

母親は要介護3の認定を受けており、認知症の症状も進んでいます。週に3回デイサービスを利用していますが、月々の介護保険 of 自己負担額や、おむつ代、医療費などの実費を合わせると、母親の月7万円の年金だけでは到底足りません。毎月約6万円の赤字が発生し、加藤さんの貯蓄から補填する日々が続いています。

 

「最初は、息子である自分が手を貸せば済む話だと思っていました。でも、夜中に何度も起こされ、徘徊を止めるために一晩中起きている日常が続くと、精神的に追い詰められていきます」

「プロの手を借りたいと思っても、お金の不安はあるし、認知症が進んだ今、母の意向をきちんとくみ取ることも難しい……」

 

加藤さんは、目の下に黒いクマを浮かべながら、掠れた声で本音を漏らします。

 

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、要介護者等から見た主な介護者の続柄は同居人が45.9%を占め、その内訳は配偶者が22.9%、子が16.2%となっています。さらに同居介護者の年齢層は男女ともに7割以上が60歳以上という現実があり、加藤さんのように高齢の子がさらに高齢の親を介護する「老老介護」が増加傾向にあります。