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泣きながら駄々をこねる孫を完全無視。代わりに始めた「お金の話」
次に会った日も、孫は同じようにおもちゃ売り場へ向かいました。
「今日は買わないよ」
そう言うと、孫は床に座り込み、いつものように大声で泣き始めました。 長男夫婦もいつものように叱ります。しかし田中さん夫婦はいつもとは違いました。「どんなに泣いても買わないよ」と言って、スタスタと歩いていったのです。その姿に、孫も長男夫婦もキョトンとしていたといいます。
後日、田中さん夫婦は孫に100円ショップで買った大学ノートを渡しました。そして「今日からこれを始めよう」と孫を誘います。 最初のページには、お小遣い500円をどう使うかを書きました。次のページには、お菓子を買うか、貯めるか。それとも将来もっと高いものを買うために残すかを一緒に考えます。
さらに、新聞で見つけた会社名を書き写し、「もし100円だけ応援するとしたら、どこにする?」という遊びも始めました。実際にお金を使うわけではなく、模擬投資。値上がり、値下がりを翌週に一緒に確認するのです。
「ジュースをたくさん売った会社なんだね」
「ゲームが人気だったからかな」
会話は自然と商品や仕事の話へ広がりました。
「お金って増えたり減ったりするんだね」
孫が初めてそう口にした日を、和子さんはよく覚えています。3カ月ほど経ったころには「今日はノートやる?」と孫のほうから聞くようになったといいます。
「お金のありがたみを少しでもわかってくれたら……こんなに面白がってくれるとは思いませんでした」
もちろん、おもちゃを欲しがる日はあります。そのたびに「本当に欲しいものか、一週間考えよう」とノートへ書き込みます。一週間後には「やっぱりいらない」と言うことも少なくありませんでした。長男夫婦からは「わがままが減った」と感謝されているといいます。
家庭でお金について教えることは重要ですが、実践できているケースは多くありません。金融経済教育推進機構『金融リテラシー調査2025年』によると、家庭でお金の使い方などを「教わる機会があった」と回答した人は全体のわずか15.2%。学校等の授業や研修で「金融経済教育を受けた」と認識している人に至っては8.7%にとどまります。
こうした教育機会の乏しさは、日本人の金融リテラシーの課題にも直結しています。同調査における諸外国との比較では、金融知識に関する共通 of 正誤問題の正答率が米国、ドイツ、フランスを下回る結果となりました。さらに、「自身の金融知識に自信がある」と答えた日本人はわずか13%で、米国の64%と比べて大きな差が開いています。
お金に関する正しい知識や判断力は、一朝一夕には身につきません。田中さん夫婦が始めた、生きたお金の教育。孫の将来への大きな財産になりそうです。