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かわいい孫の「また買って」が続いた
「おじいちゃん、おもちゃ買って」
その一言を断れなかった時期がありました。 神奈川県内で暮らす田中正夫さん(74歳・仮名)と妻の和子さん(72歳・仮名)。長男夫婦の長男、7歳の孫とは月に2~3回会います。会うたびにショッピングモールへ行き、ゲームソフトやフィギュア、おもちゃを買うのが半ば恒例になっていました。
「今日は3,000円くらいかなと思ったら、結局8,000円。クリスマスや誕生日は2万円近く使うこともありました」
難色を示すと孫は泣きます。長男夫婦は「わがままをいうんじゃない」と叱るものの、目に入れても痛くないほど可愛い孫のため――結局は買ってあげてしまう。甘々な祖父母である自覚はありました。
年金生活ではあったものの、当初、余裕はありました。夫婦の年金収入は月約31万円、手取りにすると約26万円。自宅の住宅ローンは完済済みです。多少の贅沢をしても、年金だけで生活費を賄うことはできるし、取り崩さなければならないといっても少額。気にすることはないと思っていました。 しかし、少しずつではあるものの、減る一方の貯蓄額に危機感を覚えます。
「現役のころは、基本的に資産は増えていくものだった。しかし年金生活が始まると、基本的に減る一方。もしかしたら、すごく長生きするかもしれない。突発的に大金が必要になるかもしれない。自分たちは耐えられるだろうか……」
調査によると、金融資産保有世帯における資産額の中央値は、50代で1,050万円、60代で1,775万円とピークに達し、70代になると減少します。老後に向けて資産形成に励むなか、資産は右肩上がりに増えていくことが当たり前だったのに対し、年金収入だけになると減る一方。その事実に大きな不安を募らせるのは、田中さん夫婦だけではありません。
そのようななか、いつものように孫が店頭で5,000円を超えるロボット玩具を抱えたまま言いました。
「前は買ってくれたじゃん」
その瞬間、正夫さんは胸の奥がざわついたといいます。
「前は買った。だから次も買う。それが当たり前になっていたんです」