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言えなかった本音、親孝行の押し売り
「お金の負担……確かに大きいですが、“お金がかかるから嫌だ”ということは、まったくないです」
最初にふと「つらいなぁ」と感じたのは、体力面でした。孫4歳、遊びたい盛りです。朝から夕方まで家中を走り回ります。基本的に相手をするのは長男夫婦の役割。しかし、和子さん自身、遊びに来てくれているのだから、知らんぷりはできません。さらに一家を迎えるための準備、料理の下ごしらえ、泊まることになったら布団の準備。気疲れもすごいといいます。
「平日は週5で働いているので、土日は休みたい――それが本音です」
前出の内閣府調査で、「充実感を覚えるとき」として「家族団らんの時」という回答を上回ったのが「ゆったりと休養しているとき」で、60代で54.1%、70代で53.7%。疲れていては、家族一緒の時間も幸せ半分といったところでしょうか。
さらに息子一家の訪問が重荷になっていた要因がありました。それが露呈したのがある土曜日。朝から買い物へ行き、昼食を作り、夕食の下ごしらえまで終えた頃には足が重くなっていました。一家が帰るとき、良一さんは笑顔で言いました。
「誕生日会をここでやろうよ。母さんも嬉しいだろ」
2週間後の土曜日は、ちょうど孫の5歳の誕生日。それを和子さんの家でやろうというのです。そのほうが和子さんも嬉しいだろうと――。
その瞬間でした。和子さんは静かに言いました。
「もう来なくていいわよ」
部屋の空気が止まりました。良一さんは「え……どういうこと?」と、うろたえていたといいます。
「ごめんね、ちょっと疲れちゃった」
その言葉に、良一さんは「そんなふうに思ってたの? 親孝行してるつもりだったのに」と、明らかにショックを受けているようだったといいます。
このあと、電話でしっかりと良一さんと話したという和子さん。良一さんからは「親孝行を押し付けていた。ごめん」と謝られました。そして誕生会は和子さんを招いて行うことになったといいます。
「息子としては高齢で心配な母かもしれないけれど、私はまだ若いつもりだし、働くつもり。精一杯の親孝行を、毎回素直に受け取れる年齢ではないんです。息子とは意識の差があったんでしょうね」
これを機に、訪問の頻度は以前の4分の1程度に。その代わり、和子さんが体調のいいときに息子一家を誘うことが多くなったといいます。