厚生労働省『人口動態統計』では、離婚件数は近年も一定数で推移しており、長年連れ添った夫婦が老後に関係を見直すケースも珍しくありません。一方で、配偶者の死後を見据え、お墓や供養のあり方を生前から自分で決める人も。あるひとりの女性の事例から、老後、そして死後の夫婦のあり方について考えます。
「月収8万円」66歳のパート妻が、結婚40年・68歳夫に一切相談せず「自分だけのお墓」を購入…夫の定年後に始まった「死後の決別」、決断の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

離婚も死後離婚も選ばなかったワケ

契約から3カ月。納骨先を記した書類を、由紀子さんは自宅の引き出しにしまってあります。子どもたちには伝えています。

 

「お母さんらしいね」

 

娘は驚きながらも反対しませんでした。きちんと自分が夫とは別の墓に入ることができるよう、公正証書遺言も用意しているそうです。一方、弘さんは何も知りません。

 

休日、テレビで終活の特集が流れた際、「俺たちも墓じまいとか考えないとな」 と話しかけてきたそうです。

 

厚生労働省『衛生行政報告例』によると、お墓の引っ越しや撤去にあたる「改葬」の件数は年間17万件を超え、過去最多を更新しています。少子高齢化や都市部への人口流出により、地方にあるお墓の維持が困難になるケースが急増していることが背景にあります。

 

そのようななか、自分だけが入るお墓を購入した由紀子さん。そのことを弘さんが知るのは、由紀子さんが先に亡くなったときだけだといいます。

 

「言えば夫は傷つくでしょう。けれど、それ以上に、最後に入る墓くらい、自分で決めたいんです」

 

離婚を考えたこともあります。厚生労働省『令和4年(2022年)人口動態統計月報年計(概数)』によると、同居20年以上、いわゆる熟年離婚は4万件ほどで推移し、離婚に占める割合は増加しています。熟年夫婦の離婚は、今や珍しいものではありません。しかし由紀子さんは、「経済的なことを考えると得策とは思えませんでした」と振り返ります。多少なりとも、夫婦としての“情”もあったからです。

 

配偶者が亡くなったあとに提出する「姻族関係終了届」というものがあります。俗にいう死後離婚。法務省『戸籍統計年計表』によると、2024年度は3,627件の提出がありました。由紀子さんもその制度を調べた時期があります。ただ、今の関心は制度よりも、自分がどこで眠るかでした。

 

「結婚生活を終わらせようとは思いません。でも人生が終わったあとのことは、自分で決めたいんです」