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離婚も死後離婚も選ばなかったワケ
契約から3カ月。納骨先を記した書類を、由紀子さんは自宅の引き出しにしまってあります。子どもたちには伝えています。
「お母さんらしいね」
娘は驚きながらも反対しませんでした。きちんと自分が夫とは別の墓に入ることができるよう、公正証書遺言も用意しているそうです。一方、弘さんは何も知りません。
休日、テレビで終活の特集が流れた際、「俺たちも墓じまいとか考えないとな」 と話しかけてきたそうです。
厚生労働省『衛生行政報告例』によると、お墓の引っ越しや撤去にあたる「改葬」の件数は年間17万件を超え、過去最多を更新しています。少子高齢化や都市部への人口流出により、地方にあるお墓の維持が困難になるケースが急増していることが背景にあります。
そのようななか、自分だけが入るお墓を購入した由紀子さん。そのことを弘さんが知るのは、由紀子さんが先に亡くなったときだけだといいます。
「言えば夫は傷つくでしょう。けれど、それ以上に、最後に入る墓くらい、自分で決めたいんです」
離婚を考えたこともあります。厚生労働省『令和4年(2022年)人口動態統計月報年計(概数)』によると、同居20年以上、いわゆる熟年離婚は4万件ほどで推移し、離婚に占める割合は増加しています。熟年夫婦の離婚は、今や珍しいものではありません。しかし由紀子さんは、「経済的なことを考えると得策とは思えませんでした」と振り返ります。多少なりとも、夫婦としての“情”もあったからです。
配偶者が亡くなったあとに提出する「姻族関係終了届」というものがあります。俗にいう死後離婚。法務省『戸籍統計年計表』によると、2024年度は3,627件の提出がありました。由紀子さんもその制度を調べた時期があります。ただ、今の関心は制度よりも、自分がどこで眠るかでした。
「結婚生活を終わらせようとは思いません。でも人生が終わったあとのことは、自分で決めたいんです」