厚生労働省『人口動態統計』では、離婚件数は近年も一定数で推移しており、長年連れ添った夫婦が老後に関係を見直すケースも珍しくありません。一方で、配偶者の死後を見据え、お墓や供養のあり方を生前から自分で決める人も。あるひとりの女性の事例から、老後、そして死後の夫婦のあり方について考えます。
「月収8万円」66歳のパート妻が、結婚40年・68歳夫に一切相談せず「自分だけのお墓」を購入…夫の定年後に始まった「死後の決別」、決断の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫に相談する気はなかった

東京都内で暮らす田辺由紀子さん(66歳・仮名)は、夫の定年から半年後、自宅から電車で40分ほどの民間霊園に一人用の永代供養墓を購入しました。費用は68万円。管理料は不要。契約書には自分の名前だけを書きました。夫の弘さん(68歳・仮名)は、この契約を知りません。

 

「相談したら反対されると思いました。それ以前に、相談する必要も感じませんでした」

 

夫婦は結婚40年。長男と長女はすでに独立しています。弘さんはメーカー勤務を定年退職し、現在、夫婦は年金暮らし。弘さんの年金は月18万円。由紀子さんのパート収入は月8万円ほど。住宅ローンは完済し、月の生活費は約21万円。数字だけ見れば、生活は安定しています。

 

それでも由紀子さんの表情は晴れません。弘さんがリタイアしてから、生活は一変したといいます。朝食が終われば新聞を読み、昼食を待ち、テレビを見て昼寝をする。夕方になれば、「今日は何?」と夕食を尋ねる。食器は流しに置いたまま。洗濯物を取り込むこともありません。

 

「40年間働いてきたんだから、家事なんてやってくれてもいいだろう」

 

それが弘さんの口癖でした。一方の由紀子さんは週3日、スーパーでパートを続けています。月収は約8万円。収入が必要だからではありません。家にいたくないからです。

 

ある日、終活セミナーで「お墓は夫婦で入るものとは限らない」という話を聞きました。さらに、永代供養墓という選択肢も知りました。その帰り道には資料を持ち帰り、数週間後には見学を予約していました。