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日本年金機構から届いた「赤い封筒」に騒然
国民年金保険料は一定額で、所得が少ない人には免除や納付猶予制度もあります。しかし、制度を利用しないまま未納を続けると、督促や催告が段階的に進みます。
「役所へ行く時間もなかったし、何とかなると思っていた」
その「何とか」は続きませんでした。ある日、健太さんのもとに赤い封筒が届きます。差出人は日本年金機構。表には大きく「最終催告状」と印字されていました。中を見ると、健太さんの名前と未納額。その額は「約46万円」で、納付期限も記載されています。
「ごめん……今の俺じゃあ、とても払えなくて」
自分宛てに届いた封筒を差し出しながら、健太さんは何度も頭を下げたといいます。
日本年金機構『令和8年度(2026年度)業務計画』および厚生労働省の資料によると、保険料の未納者に対する強制徴収の基準は明確で、「控除後所得が300万円以上、かつ未納期間が7カ月以上」に該当する滞納者に対しては、例外なく督促状が送付され、財産調査が開始されます。かつては所得1,000万円以上の高額所得者が主な対象でしたが、段階的に拡大されました。
厚生労働省『令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況を公表します』によると、令和6年度に最終催告状が送られたのは16万8,456件、最終的に財産の差し押さえに至ったのは2万6,797件。最終催告状を受け取ったケースのうち、約6件に1件が実際に財産を差し押さえられている計算になります。
「ふざけるな! 俺たちが毎月送っていた金は何に使っていたんだ」
正一さんは激昂しました。しかし、健太さんも贅沢をしていたわけではありません。収入が安定しないフリーランスゆえ、親からの仕送りは収入が足りないときの補填として使いきっていました。また、余裕があるときのお金もすべて足りないときの補填にまわり、赤い封筒で支払いを迫られても、貯蓄はほぼゼロだったのです。
一方で、金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)2025年』によると、健太さんと同年代である40代・単身世帯のうち、金融資産をまったく持たない「非保有世帯」の割合は32.1%に達しています。実に同年代の約3人に1人が余裕ゼロという厳しい現状があり、いざという時に身動きが取れなくなるリスクを抱えているのです。
結局、夫婦は定期預金を解約し、健太さんの保険料未納を解消しました。ただ、生活が苦しいとはいえ、保険料の免除・猶予制度は利用しない(させない)といいます。
「今、国民年金は満額もらえて月7万円くらい。あの子が年金をもらうころに何円になっているかはわからないけど、満額もらっても生活は成り立たない。それでも、もらえないよりまし」
厚生労働省は、保険料の免除制度や納付猶予制度の利用を呼びかけています。経済的に納付が難しい場合でも、放置するより制度を利用したほうが将来の年金受給や督促の面で不利益を抑えられるケースがあります。しかし、受け取れる年金額は納付した保険料に左右されます。保険料の免除・猶予制度を利用して、一時的に生活が楽になっても、その後、保険料の追納がなければ将来の年金は減額され、それが一生続くのです。
親は自分の老後を削って子を支える。だからといって、子が年金世代になったとき、十分な年金がもらえるわけではなく、負の連鎖を断ち切ることはできない――それが現実です。