自分が築き上げた財産を死後にどう残すかは、多くのシニアにとって大きな関心事です。内閣府の「令和6年度 高齢社会対策総合調査」によると、将来的な財産の使い道として「遺族等へ財産を残したい」と答えた人は35.9%に上り、最も高い割合を占めています。 しかし、「誰に」「いくら」残すのかという配分の指定は、時に遺された家族のあいだに思わぬ波紋を広げることがあります。
一番可愛がられていたのは俺なのに…資産2億円・96歳祖父の「遺言書」に親族一同激震。孫6人には平等に遺産が分けられるも、「有名私大卒・月収100万円の36歳孫」だけもらえなかった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

祖父から初孫への事前の援助

タイチさんは、都内の有名私立大学を卒業後、外資系企業に勤務して月収100万円を稼いでいます。親族のなかでもエリートとして、たびたび父や祖父からも誇らしげに自慢されていました。

 

遺言書の最後に添えられていた「付言事項(遺言者の気持ちを書き添える文章)」には、祖父の真意が次のように綴られていたのです。

 

「実の息子たちが親である私より先に亡くなった経験から、孫たちに対し、『本当の平等』について考えるようになった。タイチには、すでに十分すぎるほどの資産をわけあたえてある。大学の学費や4年間の仕送り、海外留学の費用、そしてマンションの頭金まで、経済的援助を行ってきた。現在の彼は立派に自立し、十分な収入を得ている。一方で、父親を早くに亡くして苦労をしてきたほかの孫たちや、まだ経済的に不安定な孫たちにこそ、この遺産を役立ててほしい」

 

法律の世界には、特定の相続人が生前に受けた特別な利益を「特別受益」と呼び、遺産分割の際にそれらを考慮して計算するという考え方があります。今回のケースは、祖父が法的なテクニックとしてこれを用いたというよりは、祖父自身の人生観として「生前にこれだけ与えたのだから、これ以上の遺産は不要である」と判断した結果とみられます。

「生前援助」が遺した感情のしこり

祖父の選択は「経済的に困窮している孫たちへの温かい配慮」であり、理にかなった、愛情深い遺産配分であるようにも思えます。現在のタイチさんの高所得の土台を作ったのは、祖父の生前援助が一因としてあることは明らかでしょう。

 

しかし、遺産分割から除外された当事者からすれば、事前の話し合いがないまま突然「お前には1円も遺さない」という事実を突きつけられたショックは計りしれません。どれほど経済的に豊かであっても、「自分だけが祖父から拒絶されたのではないか」という痛みを抱えることになってしまったのです。タイチさんがこのあと、自身の遺留分請求の申立てなどを行った場合、孫のあいだで誰も望まない紛争が発生する可能性もあります。

 

生前における教育費の援助や住宅資金の提供は、家族間の愛情のサポートですが、のちの遺産相続の段階で今回のような遺されたものに「しこり」を残すきっかけとなるケースもあります。生前援助の場合、お金を渡して終わりにするのではなく、その意図や最終的な遺産配分のプランまでをどう家族に伝えていくか。コミュニケーションまでを含めて設計しておくことこそが、本当の意味で遺された家族を守るための生前対策といえるのかもしれません。

 

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