野村総合研究所の2025年の推計データによると、日本国内において純金融資産5,000万円以上1億円未満の「準富裕層」は403.9万世帯存在します。これに対し、1億円以上5億円未満の「富裕層」は153.5万世帯となっています。準富裕層として一定の資産を築いた人のなかには、次のステップである「富裕層」の生活やステータスに憧れを抱く人も少なくありません。
「怒ってごめん、いまさら恥ずかしい…」若手証券外務員を怒鳴りつけた資産7,500万円、“富裕層になりたい”65歳元サラリーマン。翌朝の株価を見て〈痛恨の猛省〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

翌朝の衝撃と、消えない羞恥心

しかし、その自信は上場日の翌朝、深い後悔へと一変することになります。

 

2026年6月12日、スペースX(ティッカー:SPCX)は公開価格135ドルで上場を迎えました。翌朝、細木さんがパソコンで株価をチェックすると、なんと初値から一気に上昇し、初日の終値は160.95ドルを記録していたのです。さらに翌営業日(6月15日)もその勢いは止まらず、再び30ドル近く値上がりし、株価は192.5ドルにまで達しました。

 

もしあのとき、提案どおりに申し込んでいたら――。画面に並ぶプラスの数字を前に、細木さんは頭を抱えました。

 

「私の資産目標額は1億円。富裕層を目指しているものの、ここぞというときに勝負ができない」

 

同時に、細木さんの胸を締め付けたのは、貴重な枠を真っ先に提案してくれた若手外務員への申し訳なさでした。「変なものを売りつけるな」と頭ごなしに怒鳴りつけた自分の知識や、これまでの「投資の常識」のほうが、時代の変化についていけていなかったのではないか。

 

「怒ってごめん、いまさら恥ずかしい……」

 

プロの提案を感情的に否定してしまった自身の器の小ささと、チャンスを自ら叩き落としてしまった事実に、細木さんは痛恨の念に駆られることになりました。

「資産防衛」と「成長性への投資」の難しさ

細木さん自身は「若い彼の言葉を信じて買っておけばよかった」と猛省していますが、客観的な視点からは、投資のあり方についてまた違った側面が見えてきます。

 

細木さんの個人的な後悔や感情とは切り離し、市場の原則として見れば、彼の「現在の業績や数字を重視する」という判断自体は、資産運用の王道であり決して間違ったものではありません。IPO直後の急騰は一時的な熱狂に過ぎないことも多く、その後急落して大損失を被るリスクも常に隣り合わせだからです。特にリタイア世代にとっては、一獲千金を狙うよりも、細木さんが取ろうとした「中身の伴わない不確実なリスクは避ける」という防衛策こそが、老後資金を守る大原則となります。

 

その一方で、これまでの常識では測れない革新的な企業が、時にセオリーを無視した爆発的な市場エネルギーを生み出すのもまた事実です。

 

堅実さを優先してリスクを回避すべきか、それとも時代の波に乗って勝負に出るべきか――。細木さんの事例は、個人のプライドや感情のコントロールも含め、投資家が常に直面する「守りと攻め」の判断の難しさを物語っています。

 

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