(※写真はイメージです/PIXTA)
舞い込んだ「宇宙モンスター企業」IPOの打診
2026年6月、日本の株式市場はある巨大なニュースに沸き立っていました。イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業「スペースX」のナスダック市場への新規上場(IPO)です。日本国内への配分額は最大約3,200億円にのぼり、主要証券会社で一斉に取り扱いがスタートしていました。
ある日の午後、細木さん(仮名/65歳)のスマートフォンに、懇意にしている証券会社の若手外務員から一本の電話が入りました。
「細木さん、米スペースX社のIPOの枠が確保できそうなんです。細木さんのこれまでの投資実績を勘案し、対面の大口枠として優先的にご案内させていただきたく思いまして……。まとまった金額になりますが、申し込まれませんか?」
市場での期待値がトップクラスのプラチナ株。決して小さな投資額ではありませんが、総資産7,500万円を有する細木さんにとっては投資余力の範囲内でした。
怒鳴りつけた理由
しかし、現役時代にメーカーの財務部門で長年数字を見てきた細木さんは、その提案に対して激しい拒絶反応を示しました。細木さんにとって、宇宙ビジネスはあまりにもリスクが高く、地に足の着いていない「夢物語」に思えたのです。
細木さんは、まだ経験の浅い若手外務員に向けて、受話器越しに強い口調でこう言い放ちました。
「宇宙ビジネスなんて、莫大な開発費がかかる。俺が生きているあいだに、あの会社が赤字から黒字に転換するわけがないだろう。話題性だけで中身が伴っていない、そんな変なものを私に売りつけるな!」
細木さんの頭にあったのは、「企業の価値は、現在の売上と利益のバランスで測るべき」という、真っ当な投資の鉄則でした。巨額のキャッシュを消費し続ける宇宙ベンチャーはリスクが高すぎる――そう確信していた細木さんは、若手の意見を聞き入れることなく一方的に電話を切り、自分の堅実な判断にどこか満足感すら覚えていました。